KEY TAKEAWAYS
この記事でわかること
- 地方自治法上、市町村は「基礎的な地方公共団体」、都道府県は「市町村を包括する広域の地方公共団体」
- 市役所は住民へのサービスを直接提供する仕事が多く、県庁は広域の事業や市町村の支援・調整が多い
- 県庁は県内各地の出先機関への異動があり、勤務地によっては転居を伴う。市役所は基本的にその市の中
- 社会人採用の試験は団体ごとにばらばら。筆記の種類と試験日を比べてから受験先を決める
- 志望動機では「なぜ県ではなく市か(その逆も)」を、仕事の違いと自分の経験で説明する
この記事の目次
市役所と県庁は、法律上どう役割が分かれている?
地方自治法第2条では、市町村は「基礎的な地方公共団体」として、都道府県が処理するものを除き、地域の事務を一般的に処理するとされています。都道府県は「市町村を包括する広域の地方公共団体」として、広域にわたる事務、市町村に関する連絡調整、規模や性質から一般の市町村が処理するのに適当でない事務を処理します(e-Gov法令検索で2026年9月27日確認)。
この役割分担が、そのまま職員の仕事の違いになります。市役所は住民票・税・子育て・ごみ・道路など暮らしに直結するサービスを自ら提供し、県庁は県全体の計画づくり、市町村への助言や支援、県立施設の運営、産業振興、広域の道路や河川などを担当します。
仕事・異動・試験は、具体的にどう違う?
| 項目 | 市役所 | 県庁 |
|---|---|---|
| 仕事の中心 | 住民へのサービスの提供(窓口・福祉・税・まちづくり) | 県全体の計画・制度、市町村の支援、広域の事業 |
| 住民との距離 | 近い。窓口や地域の会議で直接話す機会が多い | やや遠い。事業者・市町村・国とのやりとりが多い |
| 異動の範囲 | 市の本庁・支所・出先機関の中 | 本庁と県内各地の出先機関 |
| 転居を伴う転勤 | 基本的にない | 勤務地によっては通勤できず転居することがある |
| 組織の規模 | 市の規模による。小さい市では1人が担う範囲が広い | 大きい。業務は細かく分かれる |
| 社会人採用の試験 | BEST・SPI・教養試験・作文など多様 | 教養試験や論文のほか、集団討論やプレゼンテーションなど段階の多い選考も見られる |
「目の前の人の役に立ちたい」という動機なら、市役所の仕事のほうが合っていることが多いです。窓口で感謝される一方、苦情や難しい相談にも直接向き合います。県庁の仕事は、制度や補助の仕組みを作って市町村や事業者を通じて県民に届ける形が多く、成果が見えるまで時間がかかる代わりに、影響の範囲が広いのが特徴です。
同じ「市」でも、規模で何が変わる?
同じ市役所でも、人口数万人の市と政令指定都市では働き方がかなり違います。小規模な市町村では職員数が少ないため、1人が担当する仕事の範囲が広く、窓口から企画、イベントの運営まで幅広く経験します。
政令指定都市(人口50万以上で政令で指定された市)は、地方自治法第252条の19にもとづき、児童福祉や生活保護など、本来は都道府県が処理する事務の一部を処理します。組織が大きく専門的な部署も多いため、仕事の内容は県庁に近い部分もあり、区役所への異動もあります。受験先を選ぶときは「市か県か」だけでなく、「どのくらいの規模の組織で、どんな範囲の仕事をしたいか」も考えると判断しやすくなります。
自分はどちらを受けるべき?判断の手順
- やりたい仕事を「住民に直接届けたい」か「仕組みや広域の事業を作りたい」かで大まかに分ける
- 勤務地の条件(転居できるか、通勤に何分までかけられるか)を書き出す
- 受けられる区分の受験資格(年齢・職務経験)を確認し、受けられない先を外す
- 残った先の筆記の種類・面接の段階数・試験日を並べ、準備の負担を見積もる
- 志望動機で「選ばなかった方との違い」を説明できるかを確かめる
| 人(仮の例) | 条件・動機 | 向いている先 | 理由 |
|---|---|---|---|
| Gさん | 介護中の親がいて転居できない。窓口業務の経験が長い | 地元の市役所 | 転居を伴う異動がなく、住民対応の経験を直接生かせる |
| Hさん | 建設コンサルで河川計画を担当。県内ならどこでも住める | 県庁(技術) | 広域の河川・道路を扱う仕事が多く、経験と重なる |
| Iさん | 企業の企画職。まちづくりに関わりたいが、転居は避けたい | 規模の大きい市(政令市・中核市など) | 企画部門が充実しやすく、異動は市の中に収まる |
表のように、勤務地の条件と経験が生きる仕事の範囲の2つで考えると、答えが出やすくなります。どちらも満たす先が複数あれば、試験の形式で絞り込みます。
試験の違いは、準備にどう影響する?
社会人採用の試験は、同じ県内でも団体ごとにばらばらです。市町村では、筆記を職務基礎力試験BEST(BEST-Aは60問・60分)やSPIのような能力検査にして面接を重視する例があります。県では教養試験や論文を課したり、集団討論やプレゼンテーションを組み合わせたりすることもあります。
筆記の種類で準備の負担は大きく変わります。受験先を決める前に受験案内の「試験内容」を確認し、同じ形式の試験を併願するのが効率的です。BEST型の市を受ける候補に入れるなら、登録不要の無料お試し10問で形式を一度確かめておくと、併願の組み合わせを判断しやすくなります。集団討論が課される場合の準備は集団討論の進め方で紹介しています。
受験先を決める前に、募集要項で何を確認する?
市役所か県庁かを考えるときは、イメージよりも受験案内(募集要項)に書かれている事実で比べるのが確実です。次の項目を、候補の団体ごとに同じ表に書き写してみてください。
- 採用予定の職と職務内容(事務の中でどんな部署を想定しているか)
- 勤務地の範囲(本庁のみか、出先機関・支所・区役所を含むか)
- 受験資格(生年月日の範囲、職務経験の年数と数え方)
- 選考の段階(筆記・作文・集団討論・プレゼンテーション・個別面接が何回あるか)
- 試験日と会場(テストセンター方式か、指定会場か)
- 採用予定日(4月1日か、年度途中か)
表にすると、「仕事は県庁の方が合うが、選考の段階が多く準備が間に合わない」「市役所の方が試験日が遅く、先に県を受けてから判断できる」のように、比べる軸がはっきりします。迷ったときは、勤務地の条件を最優先にして、残った候補を仕事内容と試験の形式で比べるのがおすすめです。
志望動機で「なぜ市(県)なのか」をどう説明する?
面接では「なぜ県ではなく市なのか(その逆も)」がよく聞かれます。仕事の違いを理解していないと、どちらにも当てはまる答えになってしまいます。
| 市役所を志望する場合(仮の例) | 県庁を志望する場合(仮の例) | |
|---|---|---|
| 弱い答え | 地域に貢献したいから | 大きな仕事がしたいから |
| 違いに触れた答え | 住民の相談に直接応じ、その声をもとに手続きを改善する仕事がしたい。窓口で10年、問い合わせ対応を改善してきた経験を生かせる | 複数の市町村にまたがる課題に、制度や補助の仕組みで取り組みたい。前職で複数の自治体と調整した経験を生かせる |
弱い答えは、市と県のどちらにも、民間企業にも当てはまります。違いに触れた答えは、その団体でしかできない仕事と自分の経験が一続きになっています。倍率の見方は社会人採用の難易度と倍率の見方、年齢の条件が気になる人は就職氷河期世代の公務員採用、採用までの全体像は経験者採用の流れも参考にしてください。
Q & A
よくある質問
Q.市役所と県庁を併願してもよいですか?+
試験日が重ならなければ併願する人は多くいます。面接で併願先を聞かれたときは正直に答えつつ、その団体を志望する理由を説明できるようにしておきます。
Q.政令指定都市はどちらに近いですか?+
政令指定都市は、本来は都道府県が処理する事務の一部も処理するため、市でありながら業務の範囲が広く、組織も大きめです。住民サービスと広域的な仕事の両方に関わる可能性があります。
Q.給料はどちらが高いですか?+
給料表は団体ごとに条例で決まり、地域手当なども違います。各団体が公表している「給与・定員管理等の状況」で比べてください。
Q.市役所に入ったあと、県庁に移ることはできますか?+
市と県は別の団体なので、県の職員になるには県の採用試験を受け直すのが基本です。市と県の間で職員を派遣し合う人事交流を行う団体もありますが、その場合も所属は元の団体のままです。最初の受験先は、長く働きたい方を選んでください。
Q.県庁でも住民と直接関わる仕事はありますか?+
あります。県の出先機関の中には、県民や事業者の相談・申請を受け付ける機関もあります。ただし市役所と比べると、制度づくりや市町村・事業者とのやりとりの割合が高くなる傾向があります。