KEY TAKEAWAYS
この記事でわかること
- 基本的人権は、平等権・自由権・社会権・参政権・請求権の5つに分けて覚えるのが基本です。自由権はさらに精神的自由・経済的自由・人身の自由に分かれます。
- 見分ける軸は「国家に何を求める権利か」。干渉しないでほしい=自由権、生活を保障してほしい=社会権、政治に参加したい=参政権、救済してほしい=請求権です。
- 取り違えやすいのは、職業選択の自由(22条・経済的自由)と勤労の権利(27条・社会権)、国家賠償請求権(17条・請求権)と選挙権(15条・参政権)です。
- プライバシー権・環境権などの「新しい人権」は、主に13条の幸福追求権や25条を根拠に主張されてきました。
この記事の目次
人権の分類を1枚の表で確認する
日本国憲法は第3章(10条〜40条)で国民の権利と義務を定めています。記述の正誤問題では「この権利はどの分類か」「根拠は何条か」を入れ替えて誤りを作る形が考えられるため、分類と条文番号を対にして覚えます。
| 分類 | 主な権利 | 条文 |
|---|---|---|
| 包括的な権利 | 個人の尊重・幸福追求権 | 13条 |
| 平等権 | 法の下の平等/家族生活における両性の平等 | 14条/24条 |
| 自由権(精神的自由) | 思想・良心の自由、信教の自由、集会・結社・表現の自由、学問の自由 | 19条・20条・21条・23条 |
| 自由権(経済的自由) | 居住・移転・職業選択の自由、財産権 | 22条・29条 |
| 自由権(人身の自由) | 奴隷的拘束・苦役からの自由、法定手続の保障、令状主義、黙秘権など | 18条・31条・33〜39条 |
| 社会権 | 生存権、教育を受ける権利、勤労の権利、労働基本権(団結権・団体交渉権・団体行動権) | 25条・26条・27条・28条 |
| 参政権 | 公務員の選定・罷免の権利(選挙権)、最高裁裁判官の国民審査、地方特別法の住民投票、憲法改正の国民投票 | 15条・79条・95条・96条 |
| 請求権 | 請願権、国家賠償請求権、裁判を受ける権利、刑事補償請求権 | 16条・17条・32条・40条 |
分類を迷わず判定する手順
権利の名前を丸暗記するより、「その権利で国家に何を求めているか」を考えると初見の記述でも判定できます。
- 国家に「干渉しないで」と求めているかを考える。そうなら自由権(国家からの自由)。
- 自由権なら、心・表現の話(精神的自由)か、お金・仕事・住む場所の話(経済的自由)か、身体の拘束や刑事手続の話(人身の自由)かに分ける。
- 国家に生活や教育・労働の条件を整えてほしいなら社会権(国家による自由)。
- 政治や公務員の選び方に参加する権利なら参政権。国民審査・国民投票・地方特別法の住民投票もここ。
- 損害や不当な扱いから救済してほしいなら請求権(国務請求権)。
自由権・社会権・参政権・請求権の中身
精神的自由は、19条の思想・良心の自由、20条の信教の自由、21条の集会・結社・表現の自由(検閲の禁止、通信の秘密を含む)、23条の学問の自由です。信教の自由と政教分離の判例は政教分離の記事で詳しく扱います。
経済的自由は、22条の居住・移転・職業選択の自由と、29条の財産権です。22条には「公共の福祉に反しない限り」という文言があり、精神的自由より広く制限を受けるとされています。
人身の自由は、身体を不当に拘束されない自由です。31条の法定手続の保障、33条の令状主義、36条の拷問・残虐な刑罰の禁止、38条の黙秘権などがあります。
社会権は、25条の生存権(健康で文化的な最低限度の生活を営む権利)が中心です。26条は教育を受ける権利と、保護者が子に普通教育を受けさせる義務・義務教育の無償、27条は勤労の権利と義務、28条は労働三権です。
参政権の中心は15条で、公務員を選定・罷免することを国民固有の権利とし、成年者による普通選挙と投票の秘密を保障しています。請求権は、17条の国家賠償請求権、32条の裁判を受ける権利、40条の刑事補償請求権などです。
取り違えやすい権利の違い
名前が似ている、または同じ条文の近くにある権利は、分類を入れ替えた記述で誤りを作りやすいところです。
| 取り違えやすい組合せ | 違い | 見分けるポイント |
|---|---|---|
| 職業選択の自由(22条)と勤労の権利(27条) | 前者は経済的自由、後者は社会権 | 「選ぶ自由」か「働く機会を求める権利」か |
| 国家賠償請求権(17条)と刑事補償請求権(40条) | どちらも請求権。前者は公務員の不法行為による損害、後者は抑留・拘禁後に無罪となった場合 | 原因が「不法行為」か「無罪」か |
| 選挙権(15条)と請願権(16条) | 選挙権は参政権。請願権は請求権として整理されることが多い | 「選ぶ」か「願い出る」か |
| 教育を受ける権利(26条1項)と普通教育を受けさせる義務(26条2項) | 権利は国民、義務を負うのは保護者 | 義務の主語は子ども本人ではない |
| 表現の自由(21条)と知る権利 | 知る権利は21条を根拠に主張される新しい人権 | 条文に「知る権利」という語はない |
新しい人権は何を根拠にしているか
社会の変化にともなって、憲法に直接書かれていない権利も主張されるようになりました。これを「新しい人権」といい、主に13条の幸福追求権や25条の生存権を根拠にしています。
| 新しい人権 | 内容 | 主な根拠 |
|---|---|---|
| プライバシーの権利 | 私生活をみだりに公開されない権利。自己に関する情報をコントロールする権利としても理解される | 13条 |
| 環境権 | 良好な環境を享受する権利 | 13条・25条 |
| 知る権利 | 行政機関などが持つ情報を知る権利。情報公開制度の考え方につながる | 21条 |
| 自己決定権 | 自分の生き方などを自分で決める権利 | 13条 |
「新しい人権は憲法に明文で規定されている」という記述は誤りです。条文に書かれていないからこそ「新しい」と呼ばれ、13条などの解釈を通じて主張されてきました。
独自の練習問題:分類を見分ける
当サイトが書き下ろした4択問題です。選択肢は「ア正・イ正/ア正・イ誤/ア誤・イ正/ア誤・イ誤」の順です。
- 問1 次のア・イの正誤の組合せとして正しいものはどれか。ア:日本国憲法25条が定める生存権は、国家に対して人間らしい生活の保障を求める社会権に分類される。イ:公務員の不法行為によって損害を受けた人が国や地方公共団体に賠償を求める権利は、参政権に分類される。(1)ア正・イ正(2)ア正・イ誤(3)ア誤・イ正(4)ア誤・イ誤
- 問2 次のア・イの正誤の組合せとして正しいものはどれか。ア:職業選択の自由は、勤労の権利と同じく社会権に分類される。イ:最高裁判所裁判官の国民審査は、参政権の一つである。(1)ア正・イ正(2)ア正・イ誤(3)ア誤・イ正(4)ア誤・イ誤
| 問 | 正解 | 各選択肢が誤りになる理由 |
|---|---|---|
| 問1 | (2)ア正・イ誤 | イの国家賠償請求権(17条)は救済を求める請求権で、参政権ではない。(1)はイを正とした点、(3)(4)はアを誤とした点で誤り |
| 問2 | (3)ア誤・イ正 | アの職業選択の自由(22条)は経済的自由で、社会権は勤労の権利(27条)。イは79条にもとづく参政権で正しい。(1)(2)はアを正、(4)はイを誤とした点で誤り |
【時短のコツ】記述を読んだら、権利名の横に「自・社・参・請」の1文字を書いてから正誤を判断すると、分類の入れ替えにすぐ気づけます。
つまずき別:次に確認すること
| つまずき | 確認する操作 |
|---|---|
| 自由権と社会権を逆に覚えている | 「国家からの自由」「国家による自由」を声に出して対にする |
| 精神的自由と経済的自由を混同する | 心・表現なら精神的、仕事・財産・住む場所なら経済的と書き出す |
| 請求権と参政権で迷う | 政治に参加するのか、救済を受けるのかを一言で言ってみる |
| 条文番号があいまい | 13・14・22・25・26・27・28条だけ先に番号と権利を対にする |
分類を覚えたら、判例の結論とあわせて覚えると記述問題に強くなります。違憲判決の一覧と憲法・政治のまとめも確認してください。4分野の問題を本番形式で試したい方は、無料お試し10問(登録不要)で解説まで確認できます。
Q & A
よくある質問
Q.平等権は自由権に入りますか?+
一般的には自由権とは別に「平等権」として分類します。14条の法の下の平等、24条の家族生活における両性の平等、44条の選挙人資格の平等などが関係します。
Q.教育を受ける権利と義務教育の違いは?+
26条1項は国民の教育を受ける権利(社会権)、2項は保護者が子どもに普通教育を受けさせる義務と、義務教育の無償を定めています。義務を負うのは子ども本人ではなく保護者です。
Q.国民の三大義務は何ですか?+
子どもに普通教育を受けさせる義務(26条)、勤労の義務(27条)、納税の義務(30条)です。勤労は権利と義務の両方として書かれている点がよく問われます。
Q.請願権は参政権ですか、請求権ですか?+
教科書や参考書によって整理が分かれます。国務請求権として扱う説明が多い一方、政治に意見を伝える面から参政権に近いとする説明もあります。試験では、記述の文脈(救済か政治参加か)で判断するのが安全です。