KEY TAKEAWAYS
この記事でわかること
- 違憲審査権は憲法81条にもとづき、最高裁だけでなく下級裁判所も持ちます。最終判断をする最高裁は「憲法の番人」と呼ばれます。
- 最高裁が法律の規定そのものを違憲とした法令違憲は、2026年2月18日の旧警備業法の判決で14件目です(2026年9月27日時点・この記事の数え方)。
- 政教分離の3件(愛媛玉串料・空知太神社・孔子廟)は、法律ではなく自治体の行為が違憲とされたもので、法令違憲とは別に数えます。
- 覚え方は「根拠条文でグループ分け」。14条(平等)を主な根拠とするものが6件と最も多く、22条・29条(経済的自由)、在外日本人、13条(個人の尊重)、17条(国家賠償)の順にまとめると整理しやすくなります。
この記事の目次
違憲審査権(81条)と違憲判断の種類
憲法81条は、最高裁判所を「一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所」と定めています。これを違憲審査権(法令審査権)といいます。
日本の違憲審査は、具体的な事件の裁判の中で、その解決に必要な範囲で判断する付随的違憲審査制とされています。事件と関係なく法律そのものの合憲性だけを審査する憲法裁判所はありません。また、違憲審査権は最高裁だけでなく下級裁判所も持っている点が記述問題で問われやすいところです。
| 種類 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 法令違憲 | 法律の規定そのものが憲法に反するとする判断 | 尊属殺重罰規定、薬事法の距離制限など(下の一覧) |
| 適用違憲 | 法律自体は合憲でも、その事件への当てはめ方が憲法に反するとする判断 | 主に下級審で用いられた例がある |
| 処分などの違憲 | 法律ではなく国や自治体の行為が憲法に反するとする判断 | 愛媛玉串料、空知太神社、孔子廟(政教分離) |
法令違憲の一覧(年代順・2026年9月時点)
最高裁が法令の規定を違憲と判断した判決・決定です。「違憲判決 一覧」を覚えるときは、年・事件・根拠条文の3列を対にします。
| 年 | 事件 | 違憲とされた内容 | 主な根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 1973 | 尊属殺重罰規定 | 親などを殺した場合の刑を死刑・無期懲役に限る刑法の規定 | 14条 |
| 1975 | 薬事法の距離制限 | 薬局の開設に距離制限を設けた規定 | 22条 |
| 1976 | 衆議院議員定数配分 | 一票の格差が大きい定数配分(選挙自体は有効) | 14条など |
| 1985 | 衆議院議員定数配分 | 同上(選挙自体は有効) | 14条など |
| 1987 | 森林法の共有林分割制限 | 共有林の分割請求を制限した規定 | 29条 |
| 2002 | 郵便法の免責規定 | 書留郵便などで国の賠償責任を免除・制限した規定 | 17条 |
| 2005 | 在外日本人の選挙権制限 | 海外に住む日本人の選挙区選挙での投票を認めない規定 | 15条など |
| 2008 | 国籍法の準正要件 | 出生後に認知された子の国籍取得に父母の婚姻を求めた規定 | 14条 |
| 2013 | 婚外子の相続分 | 婚外子の相続分を婚内子の2分の1とした民法の規定 | 14条 |
| 2015 | 再婚禁止期間 | 女性の再婚禁止期間のうち100日を超える部分 | 14条・24条 |
| 2022 | 在外国民の国民審査 | 海外に住む日本人に最高裁裁判官の国民審査を認めない法律 | 15条・79条 |
| 2023 | 性別変更の生殖不能要件 | 性別変更に生殖腺の機能を失っていることを求めた規定 | 13条 |
| 2024 | 旧優生保護法 | 不妊手術を強制した旧優生保護法の規定 | 13条・14条 |
| 2026 | 旧警備業法の欠格条項 | 被保佐人を一律に警備員になれないとした改正前の規定 | 22条・14条 |
違憲とされた規定の多くは、その後、国会で改正・削除されています。たとえば婚外子の相続分は2013年の民法改正で平等になり、女性の再婚禁止期間は2024年4月施行の改正民法で廃止されました。
最近の違憲判決と、判断待ちの訴訟
在外国民審査(2022年5月25日・大法廷判決):海外に住む日本人が最高裁裁判官の国民審査に投票できない状態を違憲とし、国の賠償責任も認めました。その後、国民審査法が改正されています(国民審査)。
性別変更の生殖不能要件(2023年10月25日・大法廷決定):性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号が、憲法13条に違反するとされました。
旧優生保護法(2024年7月3日・大法廷判決):不妊手術を強制した規定は13条・14条1項に違反するとし、国に賠償を命じました。
旧警備業法の欠格条項(2026年2月18日・大法廷判決):2019年改正前の警備業法で、被保佐人であることを警備員の欠格事由とした部分が、職業選択の自由(22条1項)と法の下の平等(14条1項)に反していたと判断されました。一方、国会が規定を改廃しなかったことについての国家賠償責任は認めませんでした。
同性婚を認めない規定:高裁では違憲とする判断が多数でしたが、最高裁は2026年3月に6件の訴訟を大法廷に回付し、2026年9月27日時点で統一判断はまだ示されていません。「最高裁が同性婚について違憲と判断した」という記述は、この時点では誤りになります。
違憲判決一覧の覚え方(条文でグループ分け)
年号を14個並べて覚えるより、主な根拠条文で5つのグループに分けると、記述の正誤判断にそのまま使えます。
| グループ | 事件 | 覚える合言葉 |
|---|---|---|
| 平等(14条) | 尊属殺、議員定数(2回)、国籍法、婚外子相続分、再婚禁止期間 | 家族と選挙の「差」は違憲になりやすい |
| 経済的自由(22条・29条) | 薬事法(22条)、森林法(29条)、旧警備業法(22条) | 仕事と財産の過剰な制限 |
| 海外に住む人(15条など) | 在外選挙権(2005年)、在外国民審査(2022年) | 海外でも選べる・審査できる |
| 個人の尊重(13条) | 性別変更(2023年)、旧優生保護法(2024年) | 体と生き方の自己決定 |
| 国家賠償(17条) | 郵便法(2002年) | 単独で覚える |
独自の練習問題:違憲審査と判決の結論
当サイトが書き下ろした4択問題です。選択肢は「ア正・イ正/ア正・イ誤/ア誤・イ正/ア誤・イ誤」の順です。
- 問1 次のア・イの正誤の組合せとして正しいものはどれか。ア:違憲審査権は最高裁判所だけが持ち、地方裁判所などの下級裁判所は持たない。イ:最高裁は、婚外子の相続分を婚内子の2分の1とする民法の規定を違憲と判断した。(1)ア正・イ正(2)ア正・イ誤(3)ア誤・イ正(4)ア誤・イ誤
- 問2 次のア・イの正誤の組合せとして正しいものはどれか。ア:薬局の開設に距離制限を設けた薬事法の規定は、職業選択の自由に反するとして違憲とされた。イ:衆議院議員の定数配分を違憲とした最高裁判決では、その選挙は無効とされた。(1)ア正・イ正(2)ア正・イ誤(3)ア誤・イ正(4)ア誤・イ誤
| 問 | 正解 | 各選択肢が誤りになる理由 |
|---|---|---|
| 問1 | (3)ア誤・イ正 | 違憲審査権は下級裁判所も持つのでアは誤り。婚外子相続分は2013年に違憲とされたのでイは正しい。(1)(2)はアを正、(4)はイを誤とした点で誤り |
| 問2 | (2)ア正・イ誤 | 薬事法の距離制限は1975年に22条違反とされたのでアは正しい。定数配分の違憲判決では選挙自体は有効とされたのでイは誤り。(1)はイを正、(3)(4)はアを誤とした点で誤り |
【時短のコツ】「違憲とされた」という記述を見たら、まず法令違憲の14件か、政教分離の違憲3件(愛媛玉串料・空知太神社・孔子廟)かを確認します。どちらにもない事件(たとえば津地鎮祭)について「違憲とされた」とあれば、誤りの可能性が高いと判断できます。
つまずき別:次に確認すること
| つまずき | 確認する操作 | 進む記事 |
|---|---|---|
| 法令違憲と政教分離の違憲判断を混ぜてしまう | 「法律が違憲」か「自治体の行為が違憲」かを分けて書く | 政教分離の判例 |
| 在外選挙権と在外国民審査を取り違える | 2005年=選挙権、2022年=国民審査と年で区別する | 国民審査 |
| 根拠条文が思い出せない | 人権の分類表で条文の位置を確認する | 人権の分類 |
| 最新の判決を知らない | 最高裁の公表資料で、受験直前の判決を確認する | — |
判例を覚えたら、実際の4択で結論を取り違えないかを確かめましょう。登録不要の無料お試し10問で、社会情勢を含む4分野の問題と解説を体験できます。
Q & A
よくある質問
Q.違憲判決が出ると法律は自動的に無くなりますか?+
日本では、違憲判決はその事件についての判断であり、法律が自動的に廃止されるわけではないと考えられています。実際には国会が法改正をして対応します。
Q.法令違憲は何件ありますか?+
数え方によって多少異なります。この記事の表(2026年9月27日時点)では、2026年2月の旧警備業法の判決が14件目にあたります。報道でも同判決は戦後14例目の法令違憲と紹介されました。
Q.議員定数の違憲判決で選挙は無効になりましたか?+
1976年と1985年の判決は定数配分を違憲としましたが、選挙を無効にすると混乱が大きいとして、選挙自体は有効としました(事情判決の考え方)。
Q.同性婚について最高裁の判断は出ていますか?+
2026年9月27日時点では出ていません。最高裁は2026年3月に関連する6件の訴訟を大法廷に回付しました。受験前に最高裁判所の公表で最新の状況を確認してください。