KEY TAKEAWAYS

この記事でわかること

  • 議会の解散、議員・首長などの解職の請求は、原則として有権者の3分の1以上の署名が必要(地方自治法76条・80条・81条・86条)。
  • 有権者が40万人を超えると、40万人を超え80万人までの部分は1/6、80万人を超える部分は1/8を掛けて足す。全体に1つの割合を掛けるのではない。
  • 80万人までの合計はちょうど20万人。有権者N人(80万人超)なら「N÷8+10万人」で一発で出る。
  • 条例の制定改廃と事務監査の請求は、有権者の規模にかかわらず1/50のまま。緩和はない。
この記事の目次
  1. 01なぜ大きな自治体では署名数が緩和される?
  2. 0240万人・80万人を超える場合の計算ルール
  3. 03署名数を計算する手順は?
  4. 04計算例:有権者30万人・60万人・120万人
  5. 051分で解く近道の式
  6. 06よくあるつまずきと確認する操作
  7. 07練習問題:署名数を4択で計算する
  8. 08練習問題2:条例の請求と解散の請求を比べる
  9. 09よくある質問
  10. 10出典・参考

なぜ大きな自治体では署名数が緩和される?

地方自治法は、議会の解散(76条)、議員の解職(80条)、首長の解職(81条)、副知事・副市町村長などの解職(86条)の請求に、選挙権を持つ人の総数の3分の1以上の署名を求めています。人を辞めさせたり議会をなくしたりする重い請求なので、ハードルを高くしています。

ところが、有権者が100万人を超えるような大都市で一律に3分の1を求めると、33万人以上の署名が必要になり、請求は事実上できなくなります。そこで、40万人を超える部分について割合を下げるルールが置かれています。緩和は法改正で段階的に広げられてきたもので、現在は40万人と80万人の2つの区切りがあります。

条文は「その総数が四十万を超え八十万以下の場合にあつてはその四十万を超える数に六分の一を乗じて得た数と四十万に三分の一を乗じて得た数とを合算して得た数」という長い書き方です。長く見えますが、やっていることは次の表の足し算だけです。

40万人・80万人を超える場合の計算ルール

ポイントは、所得税の累進課税のように有権者を区分に分け、区分ごとに違う割合を掛けて合計することです。

解散・解職請求に必要な署名数の計算(地方自治法76条1項ほか、2026年9月27日確認)
有権者数の区分その区分に掛ける割合区分が満杯のときの署名数
40万人以下の部分3分の1約133,333人
40万人を超え80万人以下の部分6分の1約66,667人(40万人分)
80万人を超える部分8分の1上限なし(人数に応じて増える)

上の2段を足すと 400,000÷3+400,000÷6=200,000 と、ちょうど20万人になります。この「80万人までで20万人」が、あとで使う近道の足場です。

署名数を計算する手順は?

  1. 請求の種類を確認する:解散・解職の請求か(原則1/3)、条例・監査の請求か(1/50で緩和なし)。
  2. 有権者数を確認する:議員の解職で選挙区があるときは、その選挙区の有権者数を使う(80条1項)。
  3. 区分に分ける:40万人まで/40万人を超え80万人まで/80万人を超える部分。
  4. 区分ごとに割合を掛けて足す:1/3、1/6、1/8。
  5. 端数を処理する:必要数は「以上」なので、小数が出たら人数は切り上げる。

計算例:有権者30万人・60万人・120万人

当サイトで作った計算例です。自治体の実際の有権者数ではありません。

例1:有権者30万人の市 40万人以下なので区分に分ける必要はありません。300,000÷3=100,000人以上です。

例2:有権者60万人の市で首長の解職を請求する場合
区分区分の人数割合署名数
40万人以下の部分400,0001/3133,333.3…
40万人超〜80万人の部分200,0001/633,333.3…
合計600,000―166,666.6… → 166,667人以上

一律に1/3を掛けると200,000人になり、緩和の分だけ約3万3千人少なくて済むことが分かります。

例3:有権者120万人の市 400,000÷3+400,000÷6+400,000÷8=133,333.3…+66,666.6…+50,000=250,000人以上。近道を使えば 200,000+(1,200,000−800,000)÷8=250,000 と一行です。一律1/3なら400,000人なので、必要数は6割強まで下がります。

1分で解く近道の式

区分の足し算を式にまとめると、有権者数Nに応じて次の形になります。本番では、この3本を覚えておくと計算が1回で済みます。

有権者数N人のときの必要署名数(区分の計算を整理した当サイトの近道)
有権者数N近道の式例
40万人以下N÷330万人 → 100,000
40万人超〜80万人以下N÷6+66,666.6…60万人 → 100,000+66,666.6…=166,667
80万人超N÷8+100,000120万人 → 150,000+100,000=250,000

よくあるつまずきと確認する操作

つまずき → 確認する操作
つまずき確認する操作
40万人を超えた全体に1/6を掛けてしまう区分に分け、40万人までの部分には必ず1/3を掛ける
80万人を超えた全体に1/8を掛けてしまう80万人までの20万人を先に置き、超えた部分だけを8で割る
小数を切り捨ててしまう必要数は「以上」。166,666.6…なら166,667人
条例の制定改廃にも緩和を当てはめる1/50の請求(条例・監査)には段階の緩和がない
議員の解職で自治体全体の有権者数を使う選挙区があれば、その選挙区の有権者数で計算する

署名数の区別が固まったら、請求先や請求後の手続きもあわせて覚えましょう。一覧は直接請求権の一覧表、首長・議員を辞めさせる手続きの流れはリコール(解職請求)とは、地方行政の論点全体は地方自治のまとめにあります。

計算の手順は、読んで分かることと時間内に解けることが別です。社会情勢の知識問題と資料の計算問題を1問1分のペースで混ぜて解くと、本番に近い負荷で確かめられます。無料お試し10問は登録不要で、4分野をまとめて試せます。

練習問題:署名数を4択で計算する

当サイトのオリジナル問題です。数値は架空の設定です。

問1 有権者が100万人の市で、市長の解職を請求するために必要な署名数として正しいものはどれか。

  1. 20,000人以上
  2. 233,334人以上
  3. 225,000人以上
  4. 333,334人以上
問1の解説|正解は3(200,000+200,000÷8=225,000)
選択肢正誤その数が出てくる考え方
1誤り1,000,000÷50。条例の制定改廃・事務監査の割合で計算している
2誤り400,000÷3+600,000÷6。80万人を超える部分にも1/6を掛けている
3正しい80万人までで200,000、超えた200,000人に1/8を掛けて25,000。合計225,000
4誤り1,000,000÷3。緩和を使わず一律に1/3を掛けている

練習問題2:条例の請求と解散の請求を比べる

問2 有権者が50万人の市で、条例の制定を請求するのに必要な署名数(ア)と、議会の解散を請求するのに必要な署名数(イ)の組合せとして正しいものはどれか。

  1. ア 10,000人以上 イ 166,667人以上
  2. ア 10,000人以上 イ 150,000人以上
  3. ア 166,667人以上 イ 10,000人以上
  4. ア 150,000人以上 イ 150,000人以上
問2の解説|正解は2
選択肢正誤理由
1誤りアは正しいが、イを500,000÷3で計算している。40万人を超える10万人には1/6を掛ける
2正しいア=500,000÷50=10,000。イ=400,000÷3+100,000÷6=133,333.3…+16,666.6…=150,000
3誤りアとイの割合を取り違えている。条例は1/50、解散は原則1/3
4誤り条例の請求にも解散と同じ緩和つきの計算を使っている。条例は規模によらず1/50

Q & A

よくある質問

Q.有権者数はいつの時点の数で計算しますか?

地方自治法74条5項により、選挙人名簿の登録が行われた日に名簿に登録されている人の総数を使い、必要な数は選挙管理委員会が告示します。実際の数は、その自治体の選挙管理委員会の告示で確認できます。

Q.有権者が40万人ちょうどの場合はどうなりますか?

40万人以下なので、単純に3分の1です。400,000÷3=133,333.3…なので、133,334人以上が必要になります。

Q.条例の制定改廃の署名も、大都市では少なくて済みますか?

いいえ。条例の制定改廃と事務監査の請求は、有権者の規模にかかわらず50分の1以上です。段階的な緩和は、原則3分の1の解散・解職の請求だけに置かれています。

Q.本番で計算する時間がないときはどうすればよいですか?

まず「単純な3分の1」の数を選択肢から消します。次に、80万人までの合計が20万人であることを足場にすれば、残りの選択肢をすばやく比べられます。

出典・参考

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