KEY TAKEAWAYS

この記事でわかること

  • リコールは、住民が署名を集めて首長・議員などを任期の途中で辞めさせる手続き(地方自治法80条・81条・86条)。
  • 首長・議員は選挙管理委員会に請求し、住民投票で過半数が同意すれば失職する。
  • 副知事・副市町村長などは首長に請求し、議会で2/3以上出席・3/4以上の同意があれば失職する。住民投票は行わない。
  • 就任から1年間(選挙管理委員・監査委員・公安委員会の委員は6か月間)は、原則として請求できない。
この記事の目次
  1. 01リコールとは?なぜ任期の途中で辞めさせられる?
  2. 02リコールの対象ごとの違い一覧
  3. 03首長・議員のリコールはどんな流れで進む?
  4. 04副知事・監査委員などのリコールは何が違う?
  5. 05リコールと混同しやすい制度との違いは?
  6. 06リコールを請求できない期間は?
  7. 07練習問題:リコールを4択で確かめる
  8. 08練習問題2:リコールと不信任議決
  9. 09実例はどう調べる?
  10. 10よくある質問
  11. 11出典・参考

リコールとは?なぜ任期の途中で辞めさせられる?

リコール(recall)は「呼び戻す」という意味の英語で、地方自治では解職請求のことを指します。法律上の用語は「解職の請求」で、「リコール」は通称です。

首長や議員の任期は4年です。住民が「次の選挙まで待てない」と考えたとき、署名を集めて辞めさせる手続きを始められるようにしたのがリコールです。議会の解散請求とあわせて、住民が自治体の運営に直接かかわる住民自治をもっとも強く表す制度といえます。国会議員には同じ制度はありません。

リコールは、対象が住民の選挙で選ばれた人(首長・議員)か、議会の同意や選挙を経て就任した人(副知事・副市町村長、選挙管理委員など)かで、手続きが大きく2つに分かれます。この2つを入れ替えると誤りの選択肢が簡単に作れるため、まず違いを表で押さえましょう。

リコールの対象ごとの違い一覧

リコールの対象×請求先×決め方×請求できない期間(地方自治法80条〜88条、2026年9月27日確認)
対象必要な署名請求先決め方請求できない期間
首長(知事・市町村長)有権者の原則1/3以上選挙管理委員会住民投票で過半数の同意就職から1年間、解職投票から1年間
議員その選挙区の有権者の原則1/3以上選挙管理委員会その選挙区の住民投票で過半数の同意就職から1年間、解職投票から1年間
副知事・副市町村長、指定都市の総合区長有権者の原則1/3以上首長議会で2/3以上出席・3/4以上の同意就職から1年間、議会の議決から1年間
選挙管理委員・監査委員・公安委員会の委員有権者の原則1/3以上首長議会で2/3以上出席・3/4以上の同意就職から6か月間、議会の議決から6か月間

署名数の「原則1/3」は、有権者が40万人を超える自治体では段階的に緩和されます。計算方法は直接請求の署名数の計算で例題つきで扱っています。

首長・議員のリコールはどんな流れで進む?

首長と議員のリコールは、次の順で進みます。署名の審査や縦覧の日数は、条例の制定請求など他の直接請求と共通のしくみです。

  1. 代表者が署名を集める:署名を求められる期間は、都道府県と指定都市では2か月以内、それ以外の市町村では1か月以内(地方自治法施行令92条)。
  2. 署名簿の審査と縦覧:市町村の選挙管理委員会が20日以内に署名の効力を審査し、7日間の縦覧で異議を受け付けて有効署名数を確定する(74条の2を準用)。
  3. 選挙管理委員会に請求する:有効署名が必要数に達していれば、代表者が選挙管理委員会に解職を請求する。
  4. 住民投票:選挙管理委員会が解職の賛否を住民の投票にかける。議員の場合は、選挙区があればその選挙区の選挙人の投票。
  5. 結果:過半数の同意があれば、その首長・議員は職を失う(83条)。首長が失職すれば、新しい首長を選ぶ選挙が行われる。

「選挙で選ばれた人を辞めさせるのだから、最後も住民の投票で決める」と理解しておくと、請求先(投票を管理する選挙管理委員会)まで一緒に思い出せます。

副知事・監査委員などのリコールは何が違う?

副知事・副市町村長、指定都市の総合区長、選挙管理委員、監査委員、公安委員会の委員は、住民の直接選挙で選ばれる職ではありません。副知事・副市町村長や監査委員は首長が議会の同意を得て選任し、選挙管理委員は議会の選挙で選ばれます。

そのため、署名の割合は首長・議員と同じ原則1/3以上ですが、請求先は首長です(86条)。首長は請求を議会にかけ、議員の3分の2以上が出席し、その4分の3以上が同意したときに、その人は職を失います(87条)。住民投票は行いません。

この「2/3出席・3/4同意」は、議会が首長の不信任を議決するときの要件(178条)と同じ数字です。どちらも「人の身分を奪う重い議決」なので特別多数が必要、とまとめて覚えられます。

リコールと混同しやすい制度との違いは?

リコールと似た制度の比較(地方自治法76条・78条・80条・83条・178条)
制度動かす人対象決まり方
議員のリコール住民(署名)特定の議員住民投票で過半数
議会の解散請求住民(署名)議会そのもの(議員全員)住民投票で過半数
首長のリコール住民(署名)首長住民投票で過半数
議会による不信任議決議会首長2/3以上出席・3/4以上の同意。首長は10日以内に議会を解散できる

不信任議決は議会が首長の責任を問う制度で、住民の署名は要りません。流れは議会と首長の関係で図のように整理しています。

リコールを請求できない期間は?

就任した直後にリコールを繰り返されると、首長も議員も落ち着いて仕事ができません。そこで地方自治法84条と88条は、一定の期間は解職の請求ができないと定めています。

  • 首長・議員:就職の日から1年間と、解職の投票の日から1年間は請求できない。
  • 副知事・副市町村長・総合区長:就職の日から1年間と、議会の議決の日から1年間。
  • 選挙管理委員・監査委員・公安委員会の委員:就職の日から6か月間と、議会の議決の日から6か月間。
  • 議会の解散請求も、一般選挙の日から1年間と、解散の投票の日から1年間はできない(79条)。

例外として、立候補者が定数を超えず投票なしで当選(無投票当選)した首長・議員に対しては、就職から1年以内でも解職請求ができます(84条ただし書、公職選挙法100条)。まずは「原則1年、委員は6か月」を確実に覚えましょう。

練習問題:リコールを4択で確かめる

当サイトのオリジナル問題です。1問1分を目安にしてください。

問1 地方自治法に定める解職請求に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 副市長の解職請求があると、選挙管理委員会が住民投票を行い、過半数の同意があれば副市長は失職する。
  2. 市長の解職請求は、市長の就職の日から6か月を過ぎれば、有権者の署名を集めて行うことができる。
  3. 監査委員の解職請求は市長に対して行い、議会で3分の2以上が出席し、その4分の3以上が同意すれば失職する。
  4. 市議会議員の解職請求は、その選挙区の有権者の署名を集め、市議会の議長に対して行う。
問1の解説|正解は3(地方自治法86条・87条)
選択肢正誤理由
1誤り副市長の解職は市長に請求し、議会の特別多数で決まる。住民投票は首長・議員の場合
2誤り首長の解職請求ができないのは就職の日から1年間(84条)。6か月は選挙管理委員・監査委員などの期間。署名を集める点は正しい
3正しい請求先は首長、議会で2/3以上出席・3/4以上の同意で失職
4誤り議員の解職の請求先は選挙管理委員会(80条)。議長は請求先ではない

練習問題2:リコールと不信任議決

問2 首長の地位を失わせる手続きに関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 議会が首長の不信任を議決するには、事前に住民の3分の1以上の署名を集める必要がある。
  2. 首長の解職の住民投票で過半数の同意があっても、議会の承認がなければ首長は失職しない。
  3. 議会が首長の不信任を議決すると、首長は通知を受けた日から10日以内に議会を解散できる。
  4. 首長の解職請求の署名数は、有権者の規模にかかわらず有権者の50分の1以上である。
問2の解説|正解は3(地方自治法178条1項)
選択肢正誤理由
1誤り不信任議決は議会だけで行う。住民の署名は要らない。1/3の署名はリコールの要件
2誤り解職の投票で過半数の同意があれば失職する(83条)。議会の承認は不要
3正しい10日以内に解散しなければ、その期間が過ぎた日に首長は失職する
4誤り首長の解職は原則1/3以上(40万人超の部分は緩和)。1/50は条例の制定改廃と事務監査

実例はどう調べる?

リコールの署名活動や住民投票は、ニュースで報じられることがあります。正確な経過(請求日、有効署名数、投票結果)を知りたいときは、報道だけでなくその自治体の選挙管理委員会の公表資料を確認するのが確実です。地方自治法は、請求の要旨や有効署名の総数を選挙管理委員会などが告示・公表するよう定めているため、自治体の公式サイトに記録が残っていることが多いからです。

試験対策としては、実例の細部より「対象・請求先・決め方・期間」の4点を正確に言えることが先です。直接請求の全体像は直接請求権の一覧表で確認できます。知識を時間内に使えるかは、登録不要の無料お試し10問で社会情勢を含む4分野を1問1分のペースで解いて確かめられます。

Q & A

よくある質問

Q.リコールの住民投票の「過半数」とは、有権者の過半数ですか?

解職の投票で賛成が過半数になれば成立します。一般には有効投票のうち賛成が半数を超えることを指すと説明され、有権者全体の過半数が必要なわけではありません。

Q.リコールが成立したら、すぐに選挙になりますか?

首長が失職すれば、公職選挙法に基づいて新しい首長を選ぶ選挙が行われます。議会の解散が成立した場合も議員の一般選挙が行われます。日程は選挙管理委員会が告示します。

Q.議会の解散と議員のリコールはどう違いますか?

議会の解散請求は議員全員の地位をまとめて失わせるもの、議員のリコールは特定の議員だけを辞めさせるものです。どちらも請求先は選挙管理委員会で、住民投票で過半数の同意が必要な点は共通しています。

Q.教育長や教育委員もリコールできますか?

地方教育行政の組織及び運営に関する法律8条に、教育長・教育委員の解職請求の定めがあります。地方自治法86条の対象とは別の法律なので、試験対策ではまず地方自治法の対象(副知事・副市町村長、総合区長、選挙管理委員、監査委員、公安委員会の委員)を押さえてください。

出典・参考

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