KEY TAKEAWAYS

この記事でわかること

  • インサイダー取引とは、上場会社の未公表の重要事実を知った会社関係者などが、公表前にその会社の株などを売買することです。
  • 金融商品取引法で禁止され、対象は会社関係者(役員・社員・取引先など)、元会社関係者(1年以内)、会社関係者から直接伝えられた情報受領者です。
  • 罰則は5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金(または併科)。法人には5億円以下の罰金があり、行政上の課徴金の対象にもなります。
  • 市場を監視するのは金融庁に置かれた証券取引等監視委員会。独占禁止法の公正取引委員会と取り違えないようにします。
この記事の目次
  1. 01インサイダー取引とは何か、なぜ禁止されるか
  2. 02規制の対象者は誰か
  3. 03重要事実と「公表」の意味
  4. 04罰則・課徴金と監視する組織
  5. 052026年の改正:暗号資産にもインサイダー取引規制
  6. 06よく似た用語・機関との違い
  7. 07独自の練習問題:誰が・いつ売買したら違反か
  8. 08つまずき別:次に確認すること
  9. 09よくある質問
  10. 10出典・参考

インサイダー取引とは何か、なぜ禁止されるか

インサイダー(内部者)取引とは、上場会社の役員や社員などが、職務などを通じて知ったまだ公表されていない重要な情報をもとに、公表前にその会社の株式などを売買することです。

たとえば、ある会社の社員が自社の大型の買収計画を知り、発表前に自社株を買えば、発表後の値上がりで利益を得られるかもしれません。一般の投資家はその情報を知らないため不公平で、こうした行為が許されると投資家が市場を信頼できなくなります。

そのため、金融商品取引法(166条・167条など)はインサイダー取引を禁止しています。利益が出たかどうかにかかわらず、重要事実を知って公表前に売買すれば違反になりうる点に注意が必要です。

規制の対象者は誰か

金融商品取引法166条にもとづく整理(2026年9月27日確認)
区分主な例
会社関係者上場会社(親会社・子会社を含む)の役員、社員、パート・アルバイトなどの従業者
会社関係者帳簿閲覧権を持つ株主、法令にもとづく権限を持つ人(公務員など)
会社関係者取引先、顧問弁護士・会計士など、その会社と契約を結んでいる人や交渉中の人
元会社関係者上記に当たらなくなった後1年以内の人
情報受領者会社関係者から重要事実を直接伝えられた人(家族や友人なども含む)

会社関係者が利益を得させる目的で他人に未公表の重要事実を伝えたり、売買を勧めたりすること(情報伝達・取引推奨)も禁止されています(167条の2)。株式の公開買付け(TOB)に関する情報にも同様の規制があります(167条)。

重要事実と「公表」の意味

種類例
決定事実(会社が決めたこと)新株の発行、合併・会社分割、業務提携、自己株式の取得、新製品の事業化、解散
発生事実(会社に起きたこと)災害による損害、主要株主の異動、訴訟の提起、取引先の倒産などによる債権の回収不能
決算情報売上高や利益などの予想値が、公表済みの数値から大きく変わること
その他上記以外で、投資判断に著しい影響を及ぼすもの(いわゆるバスケット条項)

「公表」とは、会社が証券取引所のシステムで開示したり、複数の報道機関に公開して一定時間が経過したりすることを指します。公表の後であれば、会社関係者でも売買は禁止されません。

罰則・課徴金と監視する組織

証券市場を監視し、インサイダー取引や相場操縦などの不公正な取引を調査するのは、金融庁に置かれている証券取引等監視委員会(SESC)です。悪質な事件は検察官に告発し、それ以外は課徴金の納付命令を出すよう勧告します。

  • 個人:5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその両方(金融商品取引法197条の2)。
  • 法人:会社の業務として行われた場合、会社にも5億円以下の罰金(207条)。
  • 没収・追徴:インサイダー取引で得た財産は原則として没収されます。
  • 課徴金:刑事罰とは別に、行政上の措置として課徴金の納付が命じられることがあります(175条)。

2026年の改正:暗号資産にもインサイダー取引規制

2026年7月15日に成立した「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律」(7月23日公布)では、暗号資産(仮想通貨)の規制が資金決済法から金融商品取引法に移され、一定の業者が取り扱う暗号資産の取引についてインサイダー取引規制の規定が整備されました。暗号資産に関する情報の公表制度もあわせて整えられます(参議院の議案要旨による)。

これらの部分は公布から1年を超えない範囲で政令で定める日に施行され、規制の対象となる人や情報の細部も今後の政令などで定まります。受験時点の状況は金融庁の公表で確認してください。試験で問われやすいのは、従来からの株式のインサイダー取引規制の基本(誰が・何を知って・いつ売買したら違反か)です。

よく似た用語・機関との違い

用語・機関意味インサイダー取引との違い
相場操縦わざと売買を繰り返すなどして株価を人為的に動かすこと未公表情報の利用ではなく、価格そのものを操作する
風説の流布株価を動かす目的で、うわさやうその情報を広めること情報を広める側の行為
ディスクロージャー上場会社が投資判断に必要な情報を適時・適切に公表すること公表により、インサイダー情報ではなくなる
公正取引委員会独占禁止法を運用する行政委員会カルテルなどを取り締まる。インサイダー取引の監視機関ではない

公正取引委員会とカルテルについては独占禁止法とカルテルで整理しています。

独自の練習問題:誰が・いつ売買したら違反か

当サイトが書き下ろした4択問題です。選択肢は「ア正・イ正/ア正・イ誤/ア誤・イ正/ア誤・イ誤」の順です。

  • 問1 次のア・イの正誤の組合せとして正しいものはどれか。ア:上場会社の社員が、未公表の合併の決定を職務上知り、公表前に自社株を買った場合、インサイダー取引の規制に違反するおそれがある。イ:インサイダー取引を調査・監視しているのは、公正取引委員会である。(1)ア正・イ正(2)ア正・イ誤(3)ア誤・イ正(4)ア誤・イ誤
  • 問2 次のア・イの正誤の組合せとして正しいものはどれか。ア:会社関係者から未公表の重要事実を直接伝えられた友人が、公表前にその会社の株を買った場合も、規制の対象になりうる。イ:未公表の重要事実を知って公表前に株を売買しても、結果として損失が出た場合はインサイダー取引にあたらない。(1)ア正・イ正(2)ア正・イ誤(3)ア誤・イ正(4)ア誤・イ誤
問正解各選択肢が誤りになる理由
問1(2)ア正・イ誤アは会社関係者による公表前の売買で規制の対象。監視・調査するのは証券取引等監視委員会なのでイは誤り。(1)はイを正、(3)(4)はアを誤とした点で誤り
問2(2)ア正・イ誤直接伝えられた友人は情報受領者なのでアは正しい。規制は損益にかかわらず適用されるのでイは誤り。(1)はイを正、(3)(4)はアを誤とした点で誤り

【時短のコツ】インサイダー取引の記述は「誰が(関係者か)」「何を(未公表の重要事実か)」「いつ(公表前か)」の3点がそろえば違反の方向、と判定します。利益の有無や動機の説明は判定に使わない情報です。

つまずき別:次に確認すること

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Q & A

よくある質問

Q.損をした場合でもインサイダー取引になりますか?

なります。インサイダー取引の規制は、利益が出たかどうかではなく、未公表の重要事実を知って公表前に売買したかどうかで判断されます。

Q.友人から聞いた情報で株を買った場合はどうなりますか?

その友人が会社関係者で、未公表の重要事実を直接伝えられた場合、あなたは情報受領者として規制の対象になりえます。

Q.証券取引等監視委員会と金融庁の関係は?

証券取引等監視委員会は金融庁に置かれた合議制の機関で、市場の監視や調査を担当します。課徴金の納付命令は、委員会の勧告を受けて金融庁が出します。

Q.公表されたらすぐに売買してもよいのですか?

会社が証券取引所の適時開示システムで開示した時点、または2つ以上の報道機関に公開してから12時間が経過した時点などで「公表」されたことになります。公表の後であれば、会社関係者でも規制の対象にはなりません。社内規程で売買の時期を制限している会社も多いので確認が必要です。

Q.家族の名義で売買すれば規制の対象になりませんか?

名義を変えても、実質的に自分の判断で重要事実を知って売買すれば規制の対象になりえます。また、家族に重要事実を伝えて売買させれば、伝えた人は情報伝達の禁止に、家族は情報受領者として規制に触れるおそれがあります。

出典・参考

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