KEY TAKEAWAYS
この記事でわかること
- 独占禁止法は1947年に制定された、公正で自由な競争を守るための法律で、「経済の憲法」とも呼ばれます。
- カルテルは、独占禁止法の「不当な取引制限」にあたり、企業どうしが共同して価格や数量、販売地域などを取り決めて競争を制限する行為です。入札談合も含まれます。
- 違反すると、排除措置命令と課徴金の対象になり、悪質な事件は公正取引委員会の告発を経て刑事罰(5年以下の拘禁刑など)が科されることもあります。
- 運用するのは公正取引委員会(委員長と委員4人の行政委員会、内閣府の外局)。自主申告で課徴金が減免されるリーニエンシー制度があります。
この記事の目次
独占禁止法の目的と禁止行為の3本柱
独占禁止法の正式名称は「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」で、1947年(昭和22年)に制定されました。戦後の経済民主化の一つとして、財閥解体とあわせて作られた法律です。目的(1条)は、私的独占・不当な取引制限・不公正な取引方法を禁止し、公正かつ自由な競争を促進して、一般消費者の利益を確保し、国民経済の民主的で健全な発達を促すことです。
| 禁止行為 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 私的独占 | 他の事業者を排除したり支配したりして、市場の競争を実質的に制限すること | 取引先に競合他社の商品を扱わないよう強制して、新規参入をできなくする |
| 不当な取引制限 | 他の事業者と共同して、価格や数量などを取り決め、競争を制限すること | カルテル(価格協定・数量制限・市場分割)、入札談合 |
| 不公正な取引方法 | 公正な競争を妨げるおそれのある取引 | 不当廉売、再販売価格の拘束、優越的地位の濫用、抱き合わせ販売 |
このほか、企業の合併や株式の保有によって市場の競争が大きく減る場合も規制の対象になります(企業結合規制)。
カルテルとは:不当な取引制限の要件
カルテルは、同じ業界の企業どうしが、本来それぞれが決めるべき価格や生産量、販売地域などを話し合って取り決めることです。独占禁止法2条6項の定義を分解すると、次の要件になります。
- 事業者が(企業などの事業を行う者が)
- 他の事業者と共同して(契約・協定など名目を問わない合意)
- 相互に事業活動を拘束し(価格の決定・維持・引上げ、数量や取引先の制限など)
- 公共の利益に反して
- 一定の取引分野における競争を実質的に制限すること
典型は、同業の数社が「来月から一斉に値上げしよう」と約束する価格カルテルです。国や自治体の入札で、参加企業があらかじめ落札者や落札価格を決めておく入札談合も不当な取引制限にあたります。発注する側の職員が関わる「官製談合」を防ぐための法律もあります。
形態としてのカルテル・トラスト・コンツェルンの違いはカルテル・トラスト・コンツェルンの違いで比較しています。
罰則・課徴金と課徴金減免制度(リーニエンシー)
カルテルは秘密裏に行われるため発見が難しいことから、課徴金減免制度(リーニエンシー)が設けられています。違反に関わった事業者が自らその内容を公正取引委員会に報告すると、申請の順位に応じた減免率に、調査への協力の度合いに応じた減算率を加えて課徴金が免除・減額されます。調査開始前に最初に申請した事業者は全額免除です。制度は2006年1月から運用され、2020年12月の改正法施行で調査協力減算制度が加わりました。
| 措置 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 排除措置命令 | 違反行為をやめさせ、再発防止を命じる | 7条 |
| 課徴金納付命令 | 違反した商品などの売上額に算定率(原則10%)をかけた額などを納付させる行政上の措置 | 7条の2 |
| 刑事罰(個人) | 5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金 | 89条 |
| 刑事罰(法人) | 5億円以下の罰金 | 95条 |
| 告発 | 刑事罰は公正取引委員会の告発を待って論じられる | 96条 |
事例で確認:電力会社のカルテル(2023年)
2023年3月30日、公正取引委員会は、旧一般電気事業者の間で互いの営業区域で顧客を獲得しないよう制限し合っていたとして、排除措置命令と課徴金納付命令を出しました。課徴金は中部電力・中部電力ミライズ・中国電力・九州電力の4社に総額約1,010億円で、当時、過去最高額と報じられました。
一方、違反行為に関わった関西電力は、課徴金減免制度にもとづいて最初に申告したことで課徴金を免れたと報じられています。価格ではなく「顧客や地域を分け合う」合意もカルテル(不当な取引制限)にあたること、リーニエンシーが実際に使われていることを示す例です。
公正取引委員会の役割と持株会社の解禁
独占禁止法を運用するのは公正取引委員会(公取委)です。国の行政組織上は内閣府の外局で、委員長と委員4人の合議制の行政委員会です。他から指揮監督を受けずに独立して職務を行う点が特徴で、違反の疑いがあると調査を行い、排除措置命令や課徴金納付命令を出します。
戦前の財閥が持株会社を中心にしていたことから、独占禁止法は制定以来、持株会社を全面的に禁止していましたが、1997年(平成9年)の改正で、事業支配力が過度に集中するものを除いて持株会社が解禁されました(9条)。
独自の練習問題:カルテルと公取委
当サイトが書き下ろした4択問題です。選択肢は「ア正・イ正/ア正・イ誤/ア誤・イ正/ア誤・イ誤」の順です。
- 問1 次のア・イの正誤の組合せとして正しいものはどれか。ア:同業の複数の企業が話し合って販売価格を一斉に引き上げることは、独占禁止法の不当な取引制限にあたる。イ:公正取引委員会は、経済産業省の内部部局として独占禁止法を運用している。(1)ア正・イ正(2)ア正・イ誤(3)ア誤・イ正(4)ア誤・イ誤
- 問2 次のア・イの正誤の組合せとして正しいものはどれか。ア:同業の企業どうしが、互いの営業地域では顧客を獲得しないと取り決めることは、価格を決めていないので独占禁止法の規制の対象にならない。イ:カルテルに参加した事業者が自ら公正取引委員会に違反を報告すると、課徴金が免除・減額される制度がある。(1)ア正・イ正(2)ア正・イ誤(3)ア誤・イ正(4)ア誤・イ誤
| 問 | 正解 | 各選択肢が誤りになる理由 |
|---|---|---|
| 問1 | (2)ア正・イ誤 | アは価格カルテルの典型で正しい。公正取引委員会は内閣府の外局の行政委員会なのでイは誤り。(1)はイを正、(3)(4)はアを誤とした点で誤り |
| 問2 | (3)ア誤・イ正 | 取引の相手方や地域を制限し合う合意も不当な取引制限にあたりうるのでアは誤り。イは課徴金減免制度の説明で正しい。(1)(2)はアを正、(4)はイを誤とした点で誤り |
【時短のコツ】「共同して」「取り決める」という語があれば不当な取引制限、「排除」「支配」なら私的独占、「不当廉売」「優越的地位」なら不公正な取引方法、と語で3本柱に振り分けてから正誤を考えると迷いません。
つまずき別:次に確認すること
| つまずき | 確認する操作 | 進む記事 |
|---|---|---|
| カルテルとトラストを混同する | 「独立したまま協定」か「合併」かで分ける | カルテル・トラスト・コンツェルンの違い |
| 監視機関を取り違える | 独禁法=公正取引委員会、証券市場=証券取引等監視委員会と対にする | インサイダー取引 |
| 経済分野の全体像を知りたい | 論点一覧で優先順位を決める | 経済分野のまとめ |
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Q & A
よくある質問
Q.カルテルは刑事罰の対象にもなりますか?+
なります。悪質・重大な事件は公正取引委員会が検事総長に告発し、5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(法人は5億円以下の罰金)が科されることがあります。課徴金とは別の制度です。
Q.「経済の憲法」と呼ばれるのはなぜですか?+
市場経済の基本ルールである公正で自由な競争を守る、経済活動全体にかかわる基本的な法律だからです。
Q.持株会社は今でも規制がありますか?+
持株会社そのものは認められていますが、事業支配力が過度に集中する会社の設立は禁止され、一定規模以上の会社には公正取引委員会への報告などが求められます。
Q.下請け取引のいじめを防ぐ法律は何ですか?+
従来の下請代金支払遅延等防止法(下請法)が改正され、2026年1月1日から「中小受託取引適正化法(取適法)」になりました。代金の支払遅延や不当な減額などを禁止し、公正取引委員会と中小企業庁が運用しています。改正で手形による支払いの禁止や、対象となる取引の拡大なども行われました。
Q.公正取引委員会はどのように違反を見つけるのですか?+
一般からの申告、課徴金減免制度にもとづく事業者からの報告、公正取引委員会自身の調査などがきっかけになります。違反の疑いがあれば、立入検査などの調査を行います。