KEY TAKEAWAYS
この記事でわかること
- 日本銀行は日本の中央銀行で、発券銀行・銀行の銀行・政府の銀行という3つの役割を持ちます。
- 紙幣(日本銀行券)は日本銀行が発行し、硬貨(貨幣)の製造・発行の権能は政府にあります。
- 日銀は金融機関の当座預金を預かって貸出しや決済を行い(銀行の銀行)、税金などの国庫金を扱います(政府の銀行)。
- 1998年4月施行の日本銀行法で「独立性」と「透明性」が明確にされました。総裁・副総裁・審議委員は両議院の同意を得て内閣が任命します。
この記事の目次
中央銀行の3つの役割を表で確認する
日本銀行(日銀)は、日本の中央銀行です。日本銀行法1条は、日銀の目的を、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うこと、そして金融機関の間の資金決済を円滑にして信用秩序の維持に資することと定めています。
日銀は国の行政機関ではなく、日本銀行法にもとづく法人です。個人や企業が日銀に口座を開いて預金をすることはできず、取引相手は主に金融機関と政府です。
| 役割 | 内容 | 主な根拠・例 |
|---|---|---|
| 発券銀行 | 日本の紙幣である日本銀行券を発行する | 日本銀行法46条 |
| 銀行の銀行 | 金融機関から当座預金を預かり、資金を貸し出し、金融機関どうしの決済を行う | 日銀当座預金、日銀ネット |
| 政府の銀行 | 国の預金(国庫金)を預かり、税金の受け入れや年金・公共事業費の支払いなどを行う | 日本銀行法35条 |
発券銀行:紙幣と硬貨は誰が発行するか
日本銀行は、日本で唯一、紙幣(日本銀行券)を発行できる銀行です。日本銀行法46条は「日本銀行は、銀行券を発行する」と定め、日本銀行券は法貨として無制限に通用するとしています。2024年7月には新しい日本銀行券(一万円・五千円・千円)の発行が始まりました。
硬貨(法律上は「貨幣」)の製造・発行の権能は政府にあります(通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律4条)。実際の製造は独立行政法人造幣局が行い、お札の印刷は独立行政法人国立印刷局が行います。
| 項目 | 紙幣(日本銀行券) | 硬貨(貨幣) |
|---|---|---|
| 発行する主体 | 日本銀行 | 政府 |
| 製造する機関 | 国立印刷局 | 造幣局 |
| 通用の範囲 | 無制限 | 額面価格の20倍まで(同じ種類の硬貨で) |
銀行の銀行:決済と「最後の貸し手」
銀行などの金融機関は、日銀に当座預金口座(日銀当座預金)を持っています。日銀は金融機関から預金を受け入れ、必要に応じて資金を貸し出します。金融機関どうしの大口の資金のやりとりは、最終的に日銀当座預金の間の振替で決済されます。
金融機関が一時的に資金不足に陥り、金融システム全体に影響が及ぶおそれがあるときには、日銀が特別に資金を貸し出すことがあります。これが「最後の貸し手」と呼ばれる機能で、信用秩序の維持につながります。
日銀当座預金の量や金利を調整するのが金融政策の手段である公開市場操作です。しくみは日銀の金融政策で解説しています。
政府の銀行:国庫金と為替介入の実務
日本銀行は、政府の預金口座を持ち、国のお金(国庫金)を扱います(日本銀行法35条)。国民が納めた税金や社会保険料は日銀の政府預金に集められ、公共事業費や年金の支払いなどはそこから出ていきます。
このほか、国債の発行・利払い・償還の事務や、外国為替市場での為替介入の実務なども日銀が行います。為替介入を決めるのは財務大臣で、日銀は代理人として実務を担当する、という関係も押さえておきましょう。
日銀の独立性と透明性
現在の日本銀行法は1997年に改正され、1998年4月1日に施行されました。戦時中の1942年に作られた旧法を全面的に改め、「独立性」と「透明性」を2つの柱としています。
- 独立性:日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は尊重されなければならない(3条1項)。
- 透明性:日銀は、通貨及び金融の調節に関する意思決定の内容と過程を国民に明らかにするよう努めなければならない(3条2項)。金融政策決定会合の議事要旨を公表し、議事録も一定期間後に公表します。
- 政策委員会:日銀の最高意思決定機関で、総裁1人・副総裁2人・審議委員6人の9人で構成されます。総裁・副総裁・審議委員は両議院の同意を得て内閣が任命します(23条)。
中央銀行が政府から独立しているのは、政府の都合でお金を増やしすぎて物価が急上昇することを防ぎ、通貨の価値を守るためと説明されます。
日銀・財務省・金融庁の役割の違い
お金に関わる組織は複数あり、記述では担当を入れ替えた誤りが考えられます。主な役割を分けて確認します。
| 組織 | 主な役割 | 取り違えやすい点 |
|---|---|---|
| 日本銀行 | 銀行券の発行、金融政策、決済システムの運営、国庫金の事務 | 金融機関への考査は行うが、行政上の監督官庁ではない |
| 財務省 | 予算・税制・国債の発行計画、為替介入の決定 | 為替介入の実務は日銀が代理で行う |
| 金融庁 | 銀行・証券会社などの監督と検査、金融制度の企画 | 証券取引等監視委員会は金融庁に置かれる |
| 政府(財務省・造幣局) | 硬貨の製造・発行 | 紙幣の発行は日銀 |
また、財政法5条は、日銀が国債を直接引き受けることを原則として禁止しています(特別の事由がある場合に国会の議決の範囲内で例外)。政府の支出のために中央銀行がお金を刷ることを防ぐ考え方で、日銀の独立性とあわせて押さえておくとよいでしょう。
独自の練習問題:3つの役割の見分け方
当サイトが書き下ろした4択問題です。
- 問1 次のア・イの正誤の組合せとして正しいものはどれか。ア:日本銀行は発券銀行として、日本銀行券と硬貨の両方を製造・発行している。イ:日本銀行は政府の銀行として、税金などの国庫金を取り扱っている。(1)ア正・イ正(2)ア正・イ誤(3)ア誤・イ正(4)ア誤・イ誤
- 問2 日本銀行の「銀行の銀行」としての役割にあたるものはどれか。(1)日本銀行券を発行し、法貨として流通させる。(2)金融機関の当座預金を預かり、金融機関間の決済を行う。(3)政府に代わって、国債の利払いや償還の事務を行う。(4)財務大臣の決定にもとづき、為替介入の実務を行う。
| 問 | 正解 | 各選択肢が誤りになる理由 |
|---|---|---|
| 問1 | (3)ア誤・イ正 | 硬貨の製造・発行の権能は政府にあるのでアは誤り。イは35条どおり。(1)(2)はアを正、(4)はイを誤とした点で誤り |
| 問2 | (2) | (1)は発券銀行の役割。(3)(4)は国の事務を扱う政府の銀行の役割で、いずれも「銀行の銀行」ではない |
【時短のコツ】役割の分類は「相手」で決めます。相手が国民全体(お札)なら発券銀行、金融機関なら銀行の銀行、政府なら政府の銀行。記述の中の相手を丸で囲むだけで判定できます。
つまずき別:次に確認すること
| つまずき | 確認する操作 | 進む記事 |
|---|---|---|
| 役割と金融政策の手段が混ざる | 3つの役割(誰と取引するか)と、金融政策(金利・お金の量)を分ける | 日銀の金融政策 |
| 金融に関わる規制も覚えたい | 証券市場の公正を守るルールを確認する | インサイダー取引 |
| 経済分野の全体像を知りたい | 論点一覧で優先順位を決める | 経済分野のまとめ |
役割の見分けは、4択で素早く判定できるかまで確かめると安心です。無料お試し10問は登録不要で、4分野の問題と全問の解説を確認できます。
Q & A
よくある質問
Q.個人が日本銀行に預金口座を作れますか?+
作れません。日本銀行の取引先は金融機関や政府などに限られています。
Q.日本銀行はいつ設立されましたか?+
1882年(明治15年)に設立されました。現在の組織の根拠は、1998年4月に施行された日本銀行法です。
Q.日銀の総裁は誰が任命しますか?+
総裁・副総裁・審議委員は、衆議院と参議院の同意を得て内閣が任命します(日本銀行法23条)。
Q.硬貨はいくらでも支払いに使えますか?+
法律上、同じ種類の硬貨は額面価格の20倍まで法貨として通用するとされています。紙幣(日本銀行券)には、このような枚数の制限はありません。
Q.日本銀行の資本金は誰が出していますか?+
日本銀行の資本金は1億円で、そのうち政府が55%を出資し、残りは民間などが出資しています。出資証券はジャスダック市場(現在の東京証券取引所スタンダード市場)に上場していますが、株式会社の株式とは違い、出資者に経営に参加する権利はありません。
Q.2024年に発行された新しいお札の肖像は誰ですか?+
2024年7月3日に発行が始まった新しい日本銀行券は、一万円券が渋沢栄一、五千円券が津田梅子、千円券が北里柴三郎です。それまでのお札も引き続き使えます。