KEY TAKEAWAYS

この記事でわかること

  • 2000年4月の地方分権一括法の施行で機関委任事務が廃止され、自治体の事務は自治事務と法定受託事務に再編された。
  • 法定受託事務は、本来は国(または都道府県)が果たすべき役割に関わる事務で、法律・政令に特に定めたもの。自治事務は「法定受託事務以外のすべて」。
  • 例:国政選挙、旅券の交付、戸籍、生活保護の決定・実施は法定受託事務。飲食店営業の許可、就学校の指定、都市計画区域の指定などは自治事務。
  • 国の関与は法定受託事務のほうが強い。自治事務は「是正の要求」、法定受託事務は「是正の指示」と「代執行」。
この記事の目次
  1. 01なぜ事務が2つに分けられた?
  2. 02自治事務と法定受託事務の違い一覧
  3. 03自治事務とは?法律で義務づけられたものも含まれる?
  4. 04法定受託事務とは?第1号と第2号の違いは?
  5. 05具体例で見分ける:どちらの事務?
  6. 06国の関与はどう違う?
  7. 07見分け方の3ステップ
  8. 08練習問題:事務の区分を4択で確かめる
  9. 09練習問題2:国の関与と条例
  10. 10よくある質問
  11. 11出典・参考

なぜ事務が2つに分けられた?

2000年3月まで、自治体の事務の中には機関委任事務というしくみがありました。知事や市町村長を「国の機関」として扱い、国の仕事をさせるもので、大臣の指揮監督を受け、自治体の議会が関われる範囲も限られていました。国と地方を上下・主従の関係に置くものとして批判されてきた制度です。

1999年7月に公布された地方分権一括法によって、2000年4月1日に機関委任事務は廃止されました。残った事務は、国が直接行うものや廃止されるものを除き、自治事務と法定受託事務の2つに再分類されています。全国知事会は、これにより自治体が法令に反しない限り独自の条例を定められるようになるなど、自己決定権が広がったと説明しています。改革の全体像は地方分権一括法とはで扱っています。

自治事務と法定受託事務の違い一覧

自治事務と法定受託事務の比較(地方自治法2条8項・9項、245条の5〜245条の8、2026年9月27日確認)
比べる点自治事務法定受託事務
定義自治体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のもの国(または都道府県)が本来果たすべき役割に関わり、法律・政令に特に定めたもの
決まり方引き算で決まる(例外でないものすべて)法律・政令に列挙される(地方自治法の別表など)
国の是正の手段是正の要求(どう直すかは自治体が決める)是正の指示、代執行(裁判を経て大臣が代わりに行う)
条例の制定法令に違反しない範囲で可法令に違反しない範囲で可
代表例飲食店営業の許可、就学校の指定、都市計画区域の指定、農業振興地域の指定国政選挙、旅券の交付、戸籍事務、生活保護の決定・実施

自治事務とは?法律で義務づけられたものも含まれる?

地方自治法2条8項は、自治事務を「地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のもの」と定義しています。自治事務は「引き算」で決まる事務です。

自治事務には、法律で自治体に義務づけられているもの(介護保険の運営など)と、自治体が独自に行うもの(独自の補助事業など)の両方が含まれます。「自治事務は法律に定めのない事務だけ」という選択肢は誤りです。

法定受託事務とは?第1号と第2号の違いは?

地方自治法2条9項によると、法定受託事務には2種類あります。

  • 第1号法定受託事務:法律・政令で都道府県、市町村、特別区が処理するとされる事務のうち、国が本来果たすべき役割に関わり、国が適正な処理を特に確保する必要があるとして法律・政令に特に定めたもの。
  • 第2号法定受託事務:法律・政令で市町村・特別区が処理するとされる事務のうち、都道府県が本来果たすべき役割に関わるもの。

どの事務が法定受託事務かは、地方自治法の別表第一・別表第二や、それぞれの法律・政令に列挙されています。同じ法律の中でも事務ごとに区分が分かれることがある点に注意してください。試験では代表例の組合せで問われることが多いので、まず例を確実に覚えましょう。

具体例で見分ける:どちらの事務?

代表例と考え方(全国知事会「機関委任事務について」の例をもとに当サイトで整理、2026年9月27日確認)
事務区分考え方のヒント
衆議院・参議院議員の選挙(国政選挙)の事務法定受託事務国の選挙なので国の役割
旅券(パスポート)の交付法定受託事務国として発行する身分証明。国全体で統一が必要
戸籍に関する事務法定受託事務国民の身分関係を全国共通で記録する
生活保護の決定・実施法定受託事務生存権を保障する国の責任
飲食店営業の許可自治事務地域の保健所が実情に応じて担う
就学校の指定自治事務地域の学校教育の運営
都市計画区域の指定自治事務まちづくりは地域が決める
農業振興地域の指定自治事務地域の土地利用の方針

国の関与はどう違う?

国や都道府県が自治体の事務に口を出すことを「関与」といいます。関与は法律か政令に根拠がなければできず(関与の法定主義、地方自治法245条の2)、目的を達成するために必要な最小限度にとどめ、自治体の自主性・自立性に配慮しなければなりません(245条の3)。

  • 自治事務:国は技術的な助言・勧告や資料の提出の要求のほか、法令違反などがあるときは「是正の要求」ができる(245条の5)。どう直すかは自治体が考える。
  • 法定受託事務:国はより強い「是正の指示」ができ(245条の7)、知事が法令に違反した管理・執行をしたり執行を怠ったりした場合は、裁判所の判決を経て大臣が代わりに行う「代執行」の手続きもある(245条の8)。

国の関与に不服がある自治体は、総務省に置かれた国地方係争処理委員会に審査を申し出ることができます(250条の7・250条の13)。

なお、2024年の改正で、大規模な災害や感染症のまん延など「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」について、国が自治体に生命・身体・財産の保護の措置に関して必要な指示をできる特例(地方自治法第14章、252条の26の5など)が設けられました。平時の関与のルールとは別の特例として押さえておきましょう。

見分け方の3ステップ

  1. 国全体で統一しないと困るかを考える。国政選挙・パスポート・戸籍・生活保護は、地域ごとにルールが違うと国として困る → 法定受託事務の候補。
  2. 地域の実情に合わせて決めるのが自然かを考える。飲食店の許可・就学校の指定・都市計画・農業振興地域 → 自治事務の候補。
  3. 迷ったら定義に戻る。法定受託事務は法律・政令に列挙された例外で、それ以外はすべて自治事務。

この3ステップは覚えるための当サイトの整理で、法律上の判定基準ではありません。最終的には代表例を覚えておくことが確実です。覚えた例は、時間を計った4択で使えるか確かめましょう。登録不要の無料お試し10問では、社会情勢を含む4分野を1問1分のペースで試せます。

練習問題:事務の区分を4択で確かめる

当サイトのオリジナル問題です。1問1分を目安にしてください。

問1 次のうち、法定受託事務に当たるものはどれか。

  1. 飲食店営業の許可
  2. 旅券の交付
  3. 就学校の指定
  4. 都市計画区域の指定
問1の解説|正解は2
選択肢正誤理由
1誤り自治事務。地域の保健所などが実情に応じて担う
2正しい旅券は国として発行するもので、法定受託事務
3誤り自治事務。地域の学校教育の運営に関わる
4誤り自治事務。まちづくりの方針は地域が決める

練習問題2:国の関与と条例

問2 自治事務と法定受託事務に関する記述として、正しいものはどれか。

  1. 自治事務については、国は法律や政令の根拠がなくても関与できる。
  2. 法定受託事務については、自治体は条例を制定することができない。
  3. 自治事務は、法律で自治体に義務づけられていない事務に限られる。
  4. 法定受託事務の処理が法令に違反するとき、各大臣は是正の指示ができる。
問2の解説|正解は4(地方自治法245条の7)
選択肢正誤理由
1誤り関与には法律・政令の根拠が必要(関与の法定主義、245条の2)
2誤り法定受託事務も自治体の事務なので、法令に違反しない範囲で条例を制定できる(14条1項)
3誤り介護保険の運営のように、法律で義務づけられた自治事務もある
4正しい法定受託事務には、自治事務の「是正の要求」より強い「是正の指示」ができる

Q & A

よくある質問

Q.法定受託事務について条例を作れますか?

作れます。機関委任事務の時代とは違い、法定受託事務も自治体の事務なので、法令に違反しない範囲で条例を制定できます(地方自治法14条1項は2条2項の事務全体を対象にしています)。

Q.機関委任事務はいつ廃止されましたか?

1999年7月16日公布の地方分権一括法(平成11年法律第87号)により、2000年4月1日に廃止されました。

Q.条例と規則の違いも一緒に覚えるべきですか?

事務の区分と条例制定権はつながっているので、あわせて覚えると整理しやすくなります。条例と規則の違いで比較しています。

出典・参考

読了、おつかれさまでした。ほかの対策ガイドを読む