KEY TAKEAWAYS
この記事でわかること
- カルテル=約束(独立したまま協定)、トラスト=合体(合併して1社に)、コンツェルン=株で支配(持株会社が株式で複数企業を支配)と覚えます。
- 独占は売り手が1社、寡占は少数の企業が市場の大部分を占める状態です。寡占の状態そのものは違法ではありません。
- 戦前の財閥はコンツェルンの典型です。持株会社は戦後禁止されましたが、1997年の独占禁止法改正で原則解禁されました。
- 寡占市場では管理価格が形成されやすく、価格が下がりにくい(下方硬直性)ため、広告やデザインなどの非価格競争が中心になります。
この記事の目次
3つの形態を比較表で見分ける
独占・寡占の形態は、企業どうしの結びつきの強さによって3つに分けられます。
| 形態 | 結びつき方 | 各企業の独立性 | 結びつきの強さ |
|---|---|---|---|
| カルテル(企業連合) | 同じ業種の企業が価格・生産量・販路などについて協定を結ぶ | 独立したまま | 弱い |
| トラスト(企業合同) | 同じ業種の企業が合併して1つの企業になる | 独立性を失う | 強い |
| コンツェルン(企業連携) | 持株会社などが株式の保有を通じて、さまざまな業種の企業を支配する | 形の上では独立しているが、実質的に支配される | 強い |
覚え方のコツは、カルテル=「約束」、トラスト=「合体」、コンツェルン=「株で支配」です。さらに「同じ業種か、異なる業種も含むか」を加えると、トラストとコンツェルンの取り違えを防げます。
独占と寡占はどう違うか
市場で売り手が1社しかない状態を独占、少数の企業が市場の大部分を占めている状態を寡占といいます。売り手が2社だけの場合は複占とも呼ばれます。
多くの企業が競争している市場では、需要と供給の関係で価格が決まります(価格の自動調節機能)。しかし独占・寡占が進むと、企業が価格に大きな影響力を持つようになり、消費者に不利になりやすくなります。そのため、競争を制限する行為が独占禁止法で規制されています。
寡占が進む背景には、大量生産による費用の低下(規模の経済)を求めて企業が大きくなることや、合併・買収が進むことがあります。
カルテル・トラスト・コンツェルンの中身
カルテルは、同じ業種の企業が独立性を保ったまま、価格や生産量、販売地域などについて協定を結ぶことです。たとえば同じ製品を作る3社が「今年は価格を下げない」と取り決めるのがカルテルです。日本では独占禁止法の「不当な取引制限」として禁止されています。
トラストは、同じ業種の企業が合併して1つの大企業になることです。19世紀末のアメリカでは石油などの分野で巨大なトラストが生まれ、これを規制するために反トラスト法(シャーマン法など)が作られました。日本でも、合併で市場の競争が大きく減る場合は、独占禁止法の企業結合規制で審査されます。
コンツェルンは、親会社(持株会社など)が株式の保有を通じて、異なる業種を含む多くの企業を支配する形態です。戦前の日本の財閥(三井・三菱・住友・安田など)は、持株会社である本社が銀行・商社・鉱工業などの会社を支配するコンツェルンの典型でした。戦後、財閥は解体され、持株会社は禁止されましたが、1997年の法改正で原則として解禁されています。
寡占市場の特徴:管理価格と非価格競争
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| プライス・リーダー(価格先導者) | 業界で最も影響力のある企業。この企業が価格を決めると、他社も追随する |
| 管理価格 | プライス・リーダーなどが決め、需要と供給の関係では決まらない価格 |
| 価格の下方硬直性 | 生産費が下がっても、また需要が減っても、価格が下がりにくいこと |
| 非価格競争 | 価格ではなく、広告・宣伝、デザイン、品質、アフターサービスなどで競い合うこと |
寡占市場では価格競争が起こりにくい代わりに、テレビCMや新製品のデザインなどで顧客を奪い合う非価格競争が中心になります。「寡占市場では価格が下がりやすい」という逆の記述は誤りです。
形態を判定する手順
- 企業が独立したままかを確認する。独立したまま協定を結ぶならカルテル。
- 独立を失って1つの会社になるならトラスト。
- 株式の保有で支配しているならコンツェルン。持株会社・財閥という語が手がかり。
- 業種を確認する。同じ業種の合併ならトラスト、異なる業種を含む支配ならコンツェルン。
| 誤った記述の例 | 正しくは |
|---|---|
| トラストは、企業が独立性を保ったまま価格協定を結ぶ形態である | それはカルテル。トラストは合併 |
| コンツェルンは、同じ業種の企業が合併して1社になる形態である | それはトラスト。コンツェルンは株式による支配 |
| 寡占の状態は、それだけで独占禁止法違反になる | 状態は違法ではない。カルテルなどの行為が禁止される |
| 持株会社は現在も全面的に禁止されている | 1997年改正で原則解禁(過度な集中は禁止) |
財閥解体から持株会社解禁までの流れ
- 戦前:三井・三菱・住友・安田などの財閥が、持株会社を頂点に多くの企業を支配する(コンツェルン)。
- 終戦直後:経済の民主化の一つとして財閥が解体される。
- 1947年:独占禁止法が制定され、持株会社の設立が全面的に禁止される。
- 1997年:独占禁止法の改正で、事業支配力が過度に集中するものを除いて持株会社が解禁される。
- 現在:「〇〇ホールディングス」のような持株会社が多く見られる。過度な集中は引き続き禁止(9条)。
「持株会社は戦後一貫して禁止されている」「財閥はトラストの典型である」という記述は誤りです。財閥は株式による支配なので、コンツェルンの典型です。
独自の練習問題:形態と寡占市場
当サイトが書き下ろした4択問題です。
- 問1 空欄に入る語句の組合せとして正しいものはどれか。「同じ業種の企業が独立性を保ったまま価格などについて協定を結ぶことを(ア)といい、持株会社が株式の保有を通じて多くの企業を支配する形態を(イ)という。」(1)ア カルテル・イ トラスト(2)ア カルテル・イ コンツェルン(3)ア トラスト・イ カルテル(4)ア トラスト・イ コンツェルン
- 問2 寡占市場の特徴として最も適当なものはどれか。(1)多数の企業が競争しているため、価格は需要と供給の関係で速やかに決まる。(2)生産費が下がると価格もすぐに下がるため、消費者に有利になりやすい。(3)価格が下がりにくく、広告やデザインなどの非価格競争が中心になりやすい。(4)売り手が1社だけの市場なので、企業どうしの競争がまったく存在しない。
| 問 | 正解 | 各選択肢が誤りになる理由 |
|---|---|---|
| 問1 | (2) | (1)はイをトラスト(合併)とした点、(3)はアをトラスト・イをカルテルとした点、(4)はアをトラストとした点で誤り |
| 問2 | (3) | (3)は管理価格による下方硬直性と非価格競争の説明で正しい。(1)は多数の企業が競争する市場の説明。(2)は下方硬直性と逆。(4)は寡占ではなく独占の説明 |
【時短のコツ】形態の問題は、記述の中の動詞(「協定を結ぶ」「合併する」「株式を保有して支配する」)に下線を引くだけで判定できます。業種の説明は、2つの形態で迷ったときだけ使います。
つまずき別:次に確認すること
| つまずき | 確認する操作 | 進む記事 |
|---|---|---|
| カルテルがなぜ違法かを説明できない | 不当な取引制限の要件を確認する | 独占禁止法とカルテル |
| 物価の用語と混ざる | インフレ・デフレと管理価格の違いを確認する | 物価と為替の基本 |
| 経済分野の全体像を知りたい | 論点一覧で優先順位を決める | 経済分野のまとめ |
用語の区別は、4択で素早く判定できるかまで確かめると安心です。無料お試し10問は登録不要で、4分野の問題と全問の解説を確認できます。
Q & A
よくある質問
Q.寡占は法律で禁止されていますか?+
寡占の状態そのものは違法ではありません。独占禁止法が禁止しているのは、カルテルなどによる競争の制限や、他社を排除する私的独占などの行為です。
Q.日本の独占禁止法で「トラスト」はどう扱われますか?+
合併そのものは自由ですが、合併によって一定の市場の競争が実質的に制限される場合は禁止されます。一定規模以上の合併は公正取引委員会への事前の届出が必要です。
Q.コングロマリットとコンツェルンは同じですか?+
違います。コングロマリット(複合企業)は、関連のない多くの業種の企業を合併・買収して多角化した巨大企業を指します。株式による支配のネットワークであるコンツェルンとは区別されます。
Q.カルテルは日本ではすべて禁止されていますか?+
独占禁止法の不当な取引制限にあたるカルテルは禁止されています。かつて独占禁止法には不況カルテル・合理化カルテルを例外として認める制度がありましたが、1999年の改正で廃止されました。ただし、個別の法律で一定の協定が独占禁止法の適用除外とされている分野もあるため、「すべて例外なく禁止」と言い切る記述には注意が必要です。
Q.寡占市場の例にはどんなものがありますか?+
少数の大企業が市場の大部分を占める業界として、自動車、ビール、携帯電話の通信事業などがよく例に挙げられます。どの程度の集中かは統計の取り方で変わるため、記述問題では「少数の企業が市場の大部分を占める」という定義で判断します。