KEY TAKEAWAYS
この記事でわかること
- 自治体は、首長も議員も住民が直接選ぶ二元代表制。互いにけん制し合うしくみが地方自治法に定められている。
- 不信任議決は議員数の2/3以上が出席し、その3/4以上の同意。首長は通知から10日以内に議会を解散できる(178条)。
- 解散しなければ首長は失職。解散後の最初の議会で再び不信任(2/3以上出席・過半数の同意)なら失職。
- 首長は議決に異議があれば再議に付せる(条例・予算は出席議員の2/3以上で再可決)。緊急時などは専決処分ができる。
この記事の目次
二元代表制とは?国の議院内閣制とどう違う?
国では、国会議員の中から国会が内閣総理大臣を指名する議院内閣制がとられています。一方、自治体では、憲法93条により首長(知事・市町村長)と議員の両方を住民が直接選挙します。住民の代表が2つあるので二元代表制と呼ばれます。
どちらも住民の代表なので、どちらか一方が強くなりすぎないよう、互いにけん制し合うしくみが地方自治法に置かれています。議会から首長へは不信任議決、首長から議会へは解散、再議、専決処分です。国の制度との違いを意識すると、「首長は議会の中から選ばれる」のような誤りの選択肢をすぐに見抜けます。
議会を開く権限(招集権)も首長にあります(101条1項)。ただし、議長は議会運営委員会の議決を経て、議員は定数の4分の1以上で、首長に臨時会の招集を請求でき、首長は請求から20日以内に招集しなければなりません。議長の請求に首長が応じないときは、議長が臨時会を招集できます。首長が議会を開かずに済ませることはできないしくみです。
議会と首長のけん制の数字一覧
| 場面 | 要件・期限 | 条文 |
|---|---|---|
| 最初の不信任議決 | 議員数の2/3以上が出席し、その3/4以上の同意 | 178条3項 |
| 首長が議会を解散できる期間 | 不信任の通知を受けた日から10日以内 | 178条1項 |
| 解散後の初議会での再度の不信任 | 議員数の2/3以上が出席し、その過半数の同意 | 178条3項 |
| 一般的な再議(異議があるとき) | 議決の日(条例・予算は送付を受けた日)から10日以内 | 176条1項 |
| 条例・予算の再議での再可決 | 出席議員の2/3以上の同意 | 176条3項 |
| 専決処分の報告 | 次の会議で議会に報告し、承認を求める | 179条3項 |
「2/3以上出席・3/4以上の同意」は、副知事・副市町村長などの解職請求を議会が決めるときの要件(87条)と同じ数字です。人の地位を奪う重い議決は特別多数、とまとめて覚えられます。リコールとの違いはリコール(解職請求)とはで扱っています。
不信任議決から解散・失職まではどう進む?
- 議会が不信任を議決する:議員数の3分の2以上が出席し、その4分の3以上が同意。議長は直ちに首長に通知する。
- 首長が選ぶ:通知を受けた日から10日以内に議会を解散するか、解散しないかを決める。
- 解散しない場合:10日が過ぎた日に、首長は職を失う。
- 解散した場合:議員の選挙が行われ、新しい議会が招集される。
- 解散後の最初の議会:議員数の3分の2以上が出席し、その過半数が再び不信任に同意すれば、議長から通知があった日に首長は職を失う。
2回目の不信任は要件が「過半数」に下がる点が引っかけの定番です。住民が選挙で新しい議員を選び直したうえでの判断なので、ハードルが下がると考えると筋が通ります。また、2回目の不信任に対して首長がもう一度議会を解散することはできず、議長から通知があった日に失職します。
なお、首長が自分から議会を解散できるのは、不信任議決を受けた場合(と、非常災害などの経費を議会が削った場合に首長がそれを不信任とみなしたとき、177条3項)に限られます。国の衆議院解散のように、首長が好きなときに解散できるわけではありません。
再議(首長の拒否権)とは?
再議は、議会の議決に対して首長が「もう一度審議してほしい」と差し戻す制度で、首長の拒否権とも呼ばれます。
- 異議があるとき(任意):首長は、議決の日(条例・予算は送付を受けた日)から10日以内に理由を示して再議に付せる。同じ議決がされれば確定するが、条例と予算は出席議員の3分の2以上の同意が必要(176条1項〜3項)。
- 議決が違法・越権のとき(義務):議決や選挙が議会の権限を超えたり法令に違反したりすると認めるときは、首長は再議に付し、または再選挙を行わせなければならない(176条4項)。
- 義務的な経費を削ったとき(義務):法令で負担する経費や、災害の応急・復旧、感染症予防の経費を議会が削除・減額したときも、首長は再議に付さなければならない(177条)。
条例の制定と再議の関係は条例と規則の違いでも扱っています。
専決処分とは?どんなときに使える?
専決処分は、本来は議会が議決すべきことを、首長が代わりに決める制度です。2種類あります。
| 種類 | できる場合 | その後 |
|---|---|---|
| 法律による専決処分(179条) | 議会が成立しない、会議を開けない、特に緊急で議会を招集する時間がない、議会が議決すべき事件を議決しない | 次の会議で報告し承認を求める。条例・予算の承認が否決されたら、首長は必要な措置を講じて議会に報告する |
| 議会の委任による専決処分(180条) | 議会の権限に属する軽易な事項で、議会が議決で指定したもの | 議会に報告する |
副知事・副市町村長の選任の同意などは、179条の専決処分の対象から除かれています。承認が得られなくても処分そのものの効力は失われないと説明されますが、首長には議会への説明責任が残ります。
練習問題:不信任議決の流れを4択で確かめる
当サイトのオリジナル問題です。1問1分を目安にしてください。
問1 議会による首長の不信任議決に関する記述として、正しいものはどれか。
- 不信任議決には、議員数の過半数が出席し、その3分の2以上の同意が必要である。
- 首長は、不信任の通知を受けた日から10日以内に議会を解散しないときは、その職を失う。
- 議会が解散された後の最初の議会で再び不信任を議決するには、出席議員の4分の3以上の同意が必要である。
- 首長は、不信任議決を受けていなくても、いつでも議会を解散することができる。
| 選択肢 | 正誤 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 誤り | 最初の不信任は議員数の2/3以上出席・その3/4以上の同意 |
| 2 | 正しい | 10日以内に解散しなければ、期間が経過した日に失職する |
| 3 | 誤り | 解散後の2回目の不信任は、2/3以上出席・過半数の同意で足りる |
| 4 | 誤り | 首長が議会を解散できるのは、不信任議決などの場合に限られる |
練習問題2:再議の要件
問2 首長が、議会で可決された条例に異議があり再議に付した。この条例を再議で同じ内容のまま確定させるために必要な要件として正しいものはどれか。
- 出席議員の過半数の同意
- 議員数の2/3以上が出席し、その3/4以上の同意
- 住民投票での過半数の同意
- 出席議員の2/3以上の同意
| 選択肢 | 正誤 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 誤り | 条例・予算以外の一般的な議決の再議なら、同じ議決で確定する。条例と予算は特別多数が必要 |
| 2 | 誤り | これは首長の不信任議決(1回目)の要件 |
| 3 | 誤り | 再議は議会の中の手続きで、住民投票は行わない |
| 4 | 正しい | 条例・予算の再議で同じ議決をするには、出席議員の2/3以上の同意が必要 |
Q & A
よくある質問
Q.首長は議会を自由に解散できますか?+
できません。首長が議会を解散できるのは、議会から不信任の議決を受けた場合などに限られます。国の内閣が衆議院を解散する場合とは違います。
Q.住民が議会を解散させることはできますか?+
できます。有権者の原則3分の1以上の署名で選挙管理委員会に解散を請求し、住民投票で過半数の同意があれば議会は解散します。詳しくは直接請求権の一覧表をご覧ください。
Q.専決処分が議会で承認されなかったら、処分は無効になりますか?+
承認されなくても処分の効力には影響しないと説明されています。ただし条例・予算の専決処分の承認が否決されたときは、首長は必要と認める措置を講じて議会に報告しなければなりません(179条4項)。
Q.数字を覚えたら、どう練習すればよいですか?+
「出席の分母」と「同意の割合」を切り離して判定する練習をしてください。登録不要の無料お試し10問では、社会情勢を含む4分野を1問1分のペースで解けます。