KEY TAKEAWAYS
この記事でわかること
- 監査委員はすべての自治体に置かれる執行機関。定数は都道府県と人口25万以上の市は4人、その他の市町村は2人(条例で増員可)。
- 住民監査請求は住民1人でもでき、対象は公金の支出など財務会計上の行為。事務監査請求は直接請求で、有権者の1/50以上の署名が必要。
- 住民監査請求の結果に不服があれば住民訴訟を起こせる。住民監査請求を経ずにいきなり住民訴訟はできない(監査請求前置)。
- 都道府県・指定都市・中核市は、毎年度、外部の専門家と包括外部監査契約を結ぶ義務がある。
この記事の目次
監査委員とは?どう選ばれる?
監査委員は、自治体のお金の使い方や事業の管理をチェックする機関で、すべての都道府県・市町村に置かれます(地方自治法195条)。首長から独立して職務を行う執行機関の1つです。
定数は、都道府県と政令で定める市(地方自治法施行令140条の2により人口25万以上の市)が4人、その他の市と町村が2人で、条例で増やすことができます。
監査委員は、首長が議会の同意を得て、財務管理や行政運営に優れた識見を持つ人(識見委員)と議員の中から選任します(196条)。条例で、議員から選任しないとすることもできます。任期は識見委員が4年、議員から選ばれた委員は議員の任期によります(197条)。監査委員には守秘義務があり、退職後も同じです(198条の3)。
監査委員はふだん何を監査している?
住民からの請求がなくても、監査委員は日常的にいくつもの監査・検査を行っています。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 定期監査 | 財務に関する事務の執行と、経営に係る事業の管理を、毎会計年度少なくとも1回以上、期日を定めて監査する |
| 随時監査 | 必要があると認めるときは、いつでも監査できる |
| 行政監査 | 必要があると認めるときは、財務以外も含めた事務の執行を監査できる(一部の事務を除く) |
| 決算審査 | 首長から回された決算を審査し、意見を付ける。決算はその後、議会の認定に付される |
| 例月出納検査 | 現金の出納を、毎月例日を定めて検査する |
つまり監査委員は、住民の請求に応じるだけでなく、自治体のお金の流れを1年を通じて見張る役割を担っています。試験では「財務の監査が中心で、必要なら事務全般にも及ぶ」と押さえておけば十分です。
事務監査請求と住民監査請求の比較表
| 比べる点 | 事務監査請求(直接請求) | 住民監査請求 |
|---|---|---|
| 請求できる人 | 有権者の1/50以上の連署 | その自治体の住民なら1人でも可 |
| 対象 | 自治体の事務の執行全般 | 違法・不当な公金の支出、財産の取得・管理・処分、契約など財務会計上の行為と「怠る事実」 |
| 請求先 | 監査委員 | 監査委員 |
| 期間の制限 | 特になし | 原則として行為のあった日(終わった日)から1年以内 |
| その後 | 監査結果の公表・議会や首長への報告 | 監査結果などに不服があれば住民訴訟 |
名前が似ていますが、事務監査請求は選挙権を持つ住民が署名を集める直接請求で、住民監査請求は住民個人の権利です。直接請求の全体像は直接請求権の一覧表にあります。
住民監査請求から住民訴訟まではどう進む?
- 住民監査請求:住民が、違法・不当な公金の支出などがあると考えたとき、証拠となる書面を添えて監査委員に監査を請求する。行為のあった日または終わった日から1年を過ぎると、正当な理由がない限り請求できない(242条)。
- 監査委員の監査:請求の日から60日以内に監査を行い、理由がないと認めればその旨を、理由があると認めれば議会・首長などに必要な措置を勧告し、請求人に通知・公表する。
- 住民訴訟:監査の結果や勧告に基づく措置に不服があるときなどは、原則として通知などから30日以内に、裁判所に住民訴訟を起こせる(242条の2)。
住民訴訟で求められるのは、行為の差止め、行政処分の取消し・無効確認、怠る事実の違法確認、職員や相手方に損害賠償などを請求するよう執行機関に求めること、の4種類です(242条の2第1項)。
住民訴訟は、住民監査請求をした人しか起こせません。これを監査請求前置といいます。「住民監査請求を経ずに住民訴訟を起こせる」という選択肢は誤りです。
外部監査制度とは?誰が義務を負う?
監査委員の監査に加えて、自治体と契約した外部の専門家(弁護士・公認会計士など)が監査するのが外部監査制度です(252条の27以下)。監査の独立性と専門性を高めるために設けられました。
| 種類 | 内容 | 対象の自治体 |
|---|---|---|
| 包括外部監査 | 外部監査人が自ら選んだテーマについて、毎会計年度、財務に関する事務などを監査する | 都道府県・指定都市・中核市は義務。その他の市町村は条例で定めれば実施 |
| 個別外部監査 | 住民の事務監査請求や住民監査請求、議会・首長の要求などの監査を、監査委員に代えて外部監査人が行う | 条例で定めた自治体 |
包括外部監査契約を結ぶときは、あらかじめ監査委員の意見を聴き、議会の議決を経る必要があります。指定都市・中核市の違いは政令指定都市・中核市・特別区の違いで整理しています。
混同しやすい「〜と〜の違い」
- 監査委員と議会の検査:議会も事務の検査や監査の請求ができるが(98条)、監査委員は専門の独立した執行機関。
- 監査委員と行政委員会:監査委員は委員会ではなく「委員」だが、首長から独立した執行機関である点は教育委員会などと同じ。一覧は行政委員会の種類へ。
- 監査委員の解職:有権者の原則1/3以上の署名で首長に請求し、議会の特別多数で決まる(86条・87条)。住民投票ではない。
練習問題:住民監査請求を4択で確かめる
当サイトのオリジナル問題です。1問1分を目安にしてください。
問1 住民監査請求に関する記述として、正しいものはどれか。
- 住民監査請求は、有権者の50分の1以上の署名がなければ行うことができない。
- 住民監査請求は、住民1人でも行うことができ、公金の支出など財務会計上の行為を対象とする。
- 住民は、住民監査請求をしなくても、いきなり住民訴訟を起こすことができる。
- 住民監査請求は、対象となる行為があった日から5年以内であれば、理由を問わず行うことができる。
| 選択肢 | 正誤 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 誤り | 1/50の署名が必要なのは直接請求の事務監査請求。住民監査請求は1人でもできる |
| 2 | 正しい | 対象は違法・不当な公金の支出、財産の管理、契約などの財務会計上の行為と怠る事実 |
| 3 | 誤り | 住民訴訟は住民監査請求を経た人しか起こせない(監査請求前置) |
| 4 | 誤り | 原則は行為のあった日または終わった日から1年以内。正当な理由があれば例外がある |
練習問題2:監査委員のしくみ
問2 監査委員に関する記述として、正しいものはどれか。
- 監査委員は、議会が議員と識見を有する者の中から選挙で選ぶ。
- 監査委員の定数は、すべての市町村で4人と定められている。
- 監査委員は、首長が議会の同意を得て選任する。
- 包括外部監査は、すべての市町村に毎年度義務づけられている。
| 選択肢 | 正誤 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 誤り | 議会の選挙で選ばれるのは選挙管理委員。監査委員は首長が議会の同意を得て選任する |
| 2 | 誤り | 4人は都道府県と人口25万以上の市。その他の市町村は2人(条例で増員可) |
| 3 | 正しい | 首長が議会の同意を得て、識見を有する者と議員のうちから選任する。条例で議員から選任しないとすることもできる |
| 4 | 誤り | 義務は都道府県・指定都市・中核市。その他の市町村は条例で定めた場合に実施 |
Q & A
よくある質問
Q.住民監査請求は、その自治体に住んでいない人もできますか?+
できません。請求できるのは「普通地方公共団体の住民」です(地方自治法242条1項)。一方、選挙権は要件ではないため、有権者に限られる直接請求とは範囲が異なります。
Q.監査委員は首長の部下ですか?+
いいえ。監査委員は首長から独立して職務を行う執行機関です。選任は首長が議会の同意を得て行いますが、監査の内容について首長の指揮は受けません。
Q.覚えたら、どう練習すればよいですか?+
「事務監査請求」と「住民監査請求」を入れ替えた4択で、キーワードから仕分けられるかを確かめてください。登録不要の無料お試し10問では、社会情勢を含む4分野を1問1分のペースで解けます。