KEY TAKEAWAYS
この記事でわかること
- 憲法改正は、国会の発議 → 国民投票による承認 → 天皇による公布の3段階で行われます(96条)。
- 発議には、衆議院・参議院の各議院で総議員の3分の2以上の賛成が必要です。発議に衆議院の優越はありません。
- 国民投票は発議から60日以後180日以内に行い、賛成票が賛成・反対の合計の過半数なら承認です。投票できるのは18歳以上で、最低投票率の定めはありません。
- 日本国憲法は1947年の施行以来、一度も改正されていません(2026年9月27日時点)。
この記事の目次
憲法改正の手続きの流れ(全体像)
日本国憲法は、通常の法律よりも改正の手続きが厳しい硬性憲法です。96条1項は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し、国民に提案してその承認を経なければならないと定めています。手続きの細部は、国会法と「日本国憲法の改正手続に関する法律」(国民投票法、2007年成立・2010年施行)で決められています。
- 原案の提出:国会議員が憲法改正原案を提出する。衆議院では議員100人以上、参議院では議員50人以上の賛成が必要(国会法68条の2)。内容で関連する事項ごとに区分して提出する。
- 憲法審査会で審査:各議院に置かれた憲法審査会で審査する(国会法102条の6)。
- 本会議で可決:衆議院・参議院それぞれの本会議で、総議員の3分の2以上の賛成で可決する。
- 国会の発議:最後の可決をもって、国会が憲法改正を発議し国民に提案したものとされる。
- 国民投票:発議の日から60日以後180日以内で国会が決めた日に行う。
- 承認:賛成の票が投票総数(賛成票と反対票の合計)の2分の1を超えれば承認。
- 公布:内閣総理大臣がただちに公布の手続きをとり、天皇が国民の名で、憲法と一体を成すものとして公布する(96条2項)。
発議の「3分の2」は何を分母にするか
発議の条件は「各議院の総議員の3分の2以上」です。「総議員」は欠席者も含めた議員全体を基準にするという意味で、「出席議員の3分の2」より厳しい条件です。
憲法改正の発議では、衆議院と参議院の権限は対等で、衆議院の優越はありません。どちらか一方の議院で3分の2に届かなければ、発議はできません。
| 場面 | 必要な賛成 | 基準(分母) |
|---|---|---|
| 憲法改正の発議 | 3分の2以上 | 各議院の総議員 |
| 法律案の衆議院での再可決 | 3分の2以上 | 衆議院の出席議員 |
| 議員の除名・秘密会の開催 | 3分の2以上 | 出席議員 |
| 通常の議決 | 過半数 | 出席議員 |
| 国民投票での承認 | 過半数(2分の1を超える) | 賛成票と反対票の合計(無効票は含まない) |
国民投票のルール
- 投票権:日本国民で満18歳以上の人(国民投票法3条。2018年6月21日以後の国民投票から18歳以上)。
- 投票の方法:投票用紙にあらかじめ印刷された「賛成」「反対」のどちらかに○をつける。
- 承認の基準:賛成の票が、賛成票と反対票を合計した数の2分の1を超えた場合に承認。
- 最低投票率:定めはなく、投票率が低くても成立する。
- 国民投票運動:選挙運動より自由度が高いが、投票日前14日間は国民投票運動のための広告放送(テレビ・ラジオCM)ができない。
- 結果への異議:投票人は、結果の告示から30日以内に東京高等裁判所に訴えを起こすことができる。
2026年7月には国民投票法の改正が成立し(7月31日公布、施行は公布から3か月を経過した日)、開票立会人・投票立会人の選任要件の緩和や、FM(超短波)放送による憲法改正案の広報放送の追加などが定められました。議案の要旨には、放送CMやインターネット広告の規制は含まれていません。
国民投票運動で制限される人・行為
国民投票運動(賛成・反対の投票を勧誘する行為)は、選挙運動と比べて広く自由に認められています。ただし、公正さを保つために、次のような制限があります。
| 制限 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 特定の公務員の運動禁止 | 裁判官・検察官・警察官や、選挙管理委員会の委員・職員などは国民投票運動ができない | 国民投票法102条 |
| 地位を利用した運動の禁止 | 公務員や教育者が、その地位にあるために特に影響力を及ぼしうる立場を利用して運動することはできない | 国民投票法103条 |
| 広告放送の制限 | 投票日前14日間は、国民投票運動のための広告放送ができない | 国民投票法105条 |
| 買収などの禁止 | 組織的に多数の投票人に金銭などを渡して投票を勧誘することなどは処罰される | 国民投票法109条 |
公布:天皇の役割と硬性憲法
国民投票で承認されると、天皇が国民の名で公布します。天皇による公布は国事行為(7条1号)の一つで、内閣の助言と承認によって行われます。天皇に改正を拒否する権限はありません。公布の時期は「ただちに」とされ、内閣が公布を遅らせることも想定されていません。
改正に法律より厳しい手続きが必要な憲法を硬性憲法、法律と同じ手続きで改正できる憲法を軟性憲法といいます。日本国憲法は、各議院の3分の2以上の発議と国民投票が必要なため、硬性憲法に当たります。
| 誤った記述の例 | 正しくは |
|---|---|
| 憲法改正の発議には、各議院の出席議員の3分の2以上の賛成が必要 | 総議員の3分の2以上 |
| 衆議院で3分の2以上の賛成があれば、参議院が否決しても発議できる | 両院対等。両方で総議員の3分の2以上が必要 |
| 国民投票は有権者総数の過半数の賛成が必要 | 賛成票と反対票の合計の過半数 |
| 国民投票が成立するには投票率50%以上が必要 | 最低投票率の定めはない |
| 憲法改正は内閣総理大臣が公布する | 天皇が国民の名で公布する |
独自の練習問題:分母と手続きの順番
当サイトが書き下ろした4択問題です。選択肢は「ア正・イ正/ア正・イ誤/ア誤・イ正/ア誤・イ誤」の順です。
- 問1 次のア・イの正誤の組合せとして正しいものはどれか。ア:憲法改正の発議には、各議院の出席議員の3分の2以上の賛成が必要である。イ:国民投票では、賛成の票が投票総数(賛成票と反対票の合計)の2分の1を超えた場合に承認となる。(1)ア正・イ正(2)ア正・イ誤(3)ア誤・イ正(4)ア誤・イ誤
- 問2 次のア・イの正誤の組合せとして正しいものはどれか。ア:国民投票は、国会の発議の日から60日以後180日以内に行われる。イ:国民投票で承認された憲法改正は、天皇が国民の名で公布する。(1)ア正・イ正(2)ア正・イ誤(3)ア誤・イ正(4)ア誤・イ誤
| 問 | 正解 | 各選択肢が誤りになる理由 |
|---|---|---|
| 問1 | (3)ア誤・イ正 | 発議は「出席議員」ではなく「総議員」の3分の2以上なのでアは誤り。イは国民投票法の承認の基準どおり。(1)(2)はアを正、(4)はイを誤とした点で誤り |
| 問2 | (1)ア正・イ正 | アは国民投票法2条、イは96条2項のとおりで、どちらも正しい。(2)(3)(4)はいずれかを誤とした点で誤り |
【時短のコツ】憲法改正の記述は、数字の直前の分母だけ見ます。「総議員」なら発議、「賛成と反対の合計」なら国民投票、と対応していれば正しく、「出席議員」「有権者総数」なら誤りです。
つまずき別:次に確認すること
| つまずき | 確認する操作 | 進む記事 |
|---|---|---|
| 3分の2の分母が混ざる | 発議(総議員)と法律案の再可決(出席議員)を並べて書く | 衆議院の優越 |
| 国民投票の年齢があいまい | 2018年6月21日以後が18歳以上と確認する | 選挙権年齢18歳 |
| 国民投票運動と選挙運動のルールを混同する | ネット選挙運動のルールと比べる | ネット選挙運動 |
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Q & A
よくある質問
Q.国民投票に最低投票率はありますか?+
ありません。国民投票法には最低投票率の定めがなく、投票率にかかわらず、賛成票が賛成・反対の合計の過半数であれば承認されます。
Q.内閣は憲法改正案を国会に提出できますか?+
国会法には議員による憲法改正原案の発議の定めがあり、衆議院100人以上・参議院50人以上の議員の賛成が必要とされています。内閣の提出権については議論があり、実際の手続きは議員の発議を前提に整えられています。
Q.日本国憲法は改正されたことがありますか?+
1947年5月3日の施行以来、2026年9月27日時点で一度も改正されていません。
Q.国民投票は国政選挙と同じ日に行えますか?+
憲法96条1項は、承認のための投票を「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票」としており、選挙と同じ日に行うことも憲法上は想定されています。国民投票法では、発議の日から60日以後180日以内で国会が議決した日に行うとされています。
Q.憲法審査会はいつ設置されましたか?+
国民投票法の制定にともなう国会法の改正で、2007年に衆議院と参議院に設置されました。実際に活動を始めたのは2011年からです。