KEY TAKEAWAYS
この記事でわかること
- 衆議院は任期が4年と短く解散もあるため、国民の意思をより反映しやすいとして、参議院より強い権限が認められています。
- 法律案は、参議院が異なる議決をしても、衆議院が出席議員の3分の2以上で再可決すれば成立します。参議院が60日以内に議決しなければ否決とみなせます。
- 予算・条約は30日、首相指名は10日、参議院が議決しなければ衆議院の議決が国会の議決になります(再可決は不要)。
- 予算は衆議院が先に審議し(先議権)、内閣不信任決議ができるのも衆議院だけです。憲法改正の発議には優越がありません。
この記事の目次
衆議院の優越とは何か
国会は衆議院と参議院の二院制で、原則として両議院の議決が一致したときに国会の議決となります。しかし、両院の意見が割れたままでは国の運営が止まってしまいます。そこで憲法は、一定の場合に衆議院の議決を優先させるしくみを設けています。これを衆議院の優越といいます。
衆議院が優越する理由は、任期が4年と参議院(6年)より短く、しかも解散があるため、そのときの国民の意思をより反映していると考えられるからです。優越は大きく「議決の優越」と「衆議院だけの権限」の2種類に分けて覚えます。
4つの議決の優越を比較する
| 項目 | 参議院が異なる議決をしたとき | 参議院が議決しないとき | 両院協議会 |
|---|---|---|---|
| 法律案(59条) | 衆議院で出席議員の3分の2以上で再可決すれば成立 | 60日以内に議決しなければ、否決したとみなすことができる(その後3分の2で再可決) | 開くことができる(任意) |
| 予算(60条) | 両院協議会でも一致しなければ衆議院の議決が国会の議決 | 30日以内に議決しなければ衆議院の議決が国会の議決 | 必ず開く |
| 条約の承認(61条) | 予算と同じ | 30日(予算と同じ) | 必ず開く |
| 内閣総理大臣の指名(67条) | 両院協議会でも一致しなければ衆議院の議決が国会の議決 | 10日以内に指名しなければ衆議院の議決が国会の議決 | 必ず開く |
日数は短い順に「首相10日 → 予算・条約30日 → 法律60日」。国政の空白が許されないものほど短い、と理由づけて覚えると入れ替えに強くなります。法律案・予算・条約は参議院が受け取った後から、首相指名は衆議院が指名の議決をした後から数えます。
法律案だけ「3分の2で再可決」が必要な理由
法律案は、衆議院で可決し参議院で否決(または修正など異なる議決)された場合、衆議院が出席議員の3分の2以上の多数で再可決すれば法律になります。予算などと違い、衆議院の議決だけで自動的に成立するわけではありません。法律は国民の権利義務に長く影響するため、より慎重な手続きになっていると説明されます。
参議院が衆議院から法律案を受け取った後60日以内に議決しないときは、衆議院は参議院がその法律案を否決したものとみなすことができます。みなし否決の後も、成立させるには3分の2以上での再可決が必要です。法律案では、両院協議会を開くかどうかは任意です。
予算・条約・首相指名の手続き
予算について参議院が衆議院と異なる議決をした場合は、必ず両院協議会を開き、それでも意見が一致しなければ衆議院の議決が国会の議決になります。参議院が衆議院の可決した予算を受け取ってから30日以内に議決しないときも同様です。ニュースで「予算が自然成立した」というのは、この30日のルールによるものです。条約の承認も同じルールです(61条)。
内閣総理大臣は国会議員の中から国会の議決で指名され、指名は他のすべての案件に先立って行います。両議院で異なる人を指名し、両院協議会でも一致しないときや、衆議院の指名の後10日以内に参議院が指名しないときは、衆議院の議決が国会の議決になります。
衆議院だけの権限と、優越がない場面
記述の正誤を判定する手順
- 案件の種類を特定する(法律案/予算/条約/首相指名/憲法改正)。
- 参議院の対応を確認する(異なる議決か、議決しないのか)。
- 日数を照らす(10・30・60)。
- 成立の条件を確かめる(自動的に衆議院の議決になるのか、3分の2の再可決が要るのか)。
- 両院協議会の扱い(必ず開く/任意)が書かれていれば最後に確認する。
| 誤った記述の例 | 正しくは |
|---|---|
| 法律案で参議院が異なる議決をしたときは、衆議院の議決がそのまま国会の議決となる | 出席議員の3分の2以上での再可決が必要 |
| 条約は衆議院に先に提出しなければならない | 先議権があるのは予算だけ |
| 首相指名で参議院が30日以内に指名しないとき、衆議院の議決が国会の議決となる | 10日以内 |
| 参議院も内閣不信任決議をすることができる | 法的効果のある不信任決議は衆議院だけ |
独自の練習問題:優越の数字と条件
当サイトが書き下ろした4択問題です。問1は選択肢を「ア正・イ正/ア正・イ誤/ア誤・イ正/ア誤・イ誤」の順にしています。
- 問1 次のア・イの正誤の組合せとして正しいものはどれか。ア:参議院が、衆議院の可決した予算を受け取った後30日以内に議決しないときは、衆議院の議決が国会の議決となる。イ:法律案について参議院が異なる議決をしたときは、衆議院の議決がそのまま国会の議決となる。(1)ア正・イ正(2)ア正・イ誤(3)ア誤・イ正(4)ア誤・イ誤
- 問2 衆議院の優越に関する記述として正しいものはどれか。(1)条約の締結の承認は、予算と同じく、必ず先に衆議院に提出して審議を受けなければならない。(2)首相の指名で、衆議院の議決後10日以内に参議院が指名しなければ、衆議院の議決が国会の議決となる。(3)憲法改正の発議は、衆議院の総議員の3分の2以上の賛成があれば、参議院の議決がなくても行える。(4)法律案で参議院が異なる議決をしたとき、衆議院が総議員の過半数で再び可決すれば法律となる。
| 問 | 正解 | 各選択肢が誤りになる理由 |
|---|---|---|
| 問1 | (2)ア正・イ誤 | アは60条2項どおり。イは3分の2以上での再可決が必要なので誤り。(1)はイを正、(3)(4)はアを誤とした点で誤り |
| 問2 | (2) | (1)先議権は予算だけ。(3)憲法改正の発議に衆議院の優越はなく、両院それぞれ総議員の3分の2以上が必要。(4)再可決に必要なのは総議員の過半数ではなく、出席議員の3分の2以上 |
【時短のコツ】「3分の2」が出てきたら、その直前が「出席議員」か「総議員」かだけを見ます。法律案の再可決なら出席議員、憲法改正の発議なら総議員。この1語の確認で判定できる記述が多くあります。
つまずき別:次に確認すること
| つまずき | 確認する操作 | 進む記事 |
|---|---|---|
| 30日と10日を取り違える | 首相10→予算30→法律60を声に出して並べる | — |
| 国会の会期の数字と混ざる | 会期(150日、30日以内の召集)を別の表に分ける | 国会の種類 |
| 不信任と解散の関係があいまい | 69条の10日以内の選択肢(解散か総辞職)を書く | 内閣不信任と解散 |
| 選挙制度の数字も覚えたい | 衆参の定数・任期を比較表で確認する | 選挙制度のしくみ |
覚えた数字は、4択の形で1分以内に判定できるか試すと身につきます。登録不要の無料お試し10問で、社会情勢を含む4分野の問題と解説を確認できます。
Q & A
よくある質問
Q.条約の承認は衆議院に先に提出する必要がありますか?+
いいえ。先議権があるのは予算だけです。条約は議決の効力(30日ルール)が予算と同じというだけで、先に衆議院に出す必要はありません。
Q.両院協議会は何人で構成されますか?+
国会法により、各議院で選ばれた10人ずつ、合計20人の協議委員で構成されます。
Q.会期の決定にも衆議院の優越はありますか?+
はい。国会法13条により、臨時会・特別会の会期や会期の延長について両議院の議決が一致しないときは、衆議院の議決によります。
Q.予算が自然成立すれば、関連する法律も成立しますか?+
いいえ。予算の執行に必要な法律(予算関連法案)は法律案なので、30日ルールではなく59条の手続きによります。参議院で否決されれば、衆議院の出席議員の3分の2以上での再可決などが必要です。