KEY TAKEAWAYS
この記事でわかること
- IRTスコアは、項目反応理論(IRT) という統計的テスト理論にもとづく得点です。BEST-Aの結果はこのスコアで自治体に示されます。
- 共通の物差しで計算するため、同じ年度内なら、異なる試験日に異なる問題を受けた人どうしでも比べられます。全国の受験者の平均的な能力が50です。
- 1題1点ではなく、正解した問題の統計的な性質で決まるので、正解数が同じでもスコアが違うことがあります。
- 受験者の対策は変わりません。1問でも多く正解すること、そのために時間配分を守ることです。
この記事の目次
IRTスコアとは何?
IRT(Item Response Theory:項目反応理論)は、テストの問題1つ1つの性質を統計的に計算し、それをもとに受験者の能力を推定する考え方です。日本人事試験研究センターは、IRTを使っている大規模試験の例として、TOEFL、PISA、日本語能力試験、ITパスポート試験などを挙げています。
センターのQ&Aによると、BEST-A(職務能力試験)と、教養試験のStandard・Logicalの90分版の結果はIRTスコアで表示されます。IRTにもとづく共通の尺度(ものさし)で計算しているので、同じ年度内の異なる試験日に異なる問題集を受けた人どうしでも能力を比べられます。尺度は、受験者の能力が受験者集団の中でどのくらいの高さかが分かるように設定され、全国の受験者の平均的な能力が50で表示されます。
素点・標準点とはどう違う?
| 得点の種類 | 計算のしかた | BESTとの関係 |
|---|---|---|
| 素点 | 正解した問題の数(1題1点) | BEST-Aの結果は素点ではなくIRTスコアで示される |
| 標準点(センターの従来型の得点) | 素点を、全国の受験者の平均点と標準偏差を使って平均50点に換算したもの | 教養試験(120分版など)の得点で使われる。問題集ごとに換算する |
| IRTスコア | 正解した問題それぞれの統計的な性質から能力を推定する。全国の受験者の平均的な能力が50 | BEST-Aと教養試験90分版で使われる。問題集が違っても同じ尺度で比べられる |
標準点もIRTスコアも「平均が50」という点は似ていますが、IRTスコアは問題そのものの性質を過去の解答データ全体から計算して使う点が違います。センターは、各問題の統計的性質を問題集ごとではなく過去の個別試験の受験者の解答データ全体から計算しているので、すべて同じ尺度上にあると説明しています。
受験日や問題が違っても公平に比べられるのはなぜ?
テストセンター方式では、受験者は受験期間の中で別々の日に受けます。毎回同じ問題を使うわけにはいかないので、日によって問題が違っても結果を比べられる仕組みが必要です。自治体が同じ職種で追加募集をしたり、年に何度も試験をしたりする場合も同じです。センターも、二次募集や通年の中途採用の選考での利用を勧めています。
素点で比べると、易しい問題が多い日に受けた人が有利になってしまいます。IRTでは、問題ごとの性質があらかじめ同じ物差しの上で分かっているので、どの問題に正解したかから能力を推定できます。センターは、本試験日と異なる日程で受けた受験者の成績を、本試験日の受験者と合わせて順位付けできるとも説明しています。
身近なたとえで考えると?
IRTの考え方は、走り高跳びにたとえると分かりやすくなります。バーの高さがあらかじめ正確に測ってあれば、別の日に別の会場で跳んだ人どうしでも「どの高さまで越えたか」で力を比べられます。跳んだ回数(素点に当たるもの)を数えるだけでは、低いバーばかり並んだ日の人が有利になってしまいます。
IRTでは、このバーの高さに当たるのが問題ごとの統計的な性質で、センターはそれを過去の解答データ全体から計算していると説明しています。受験者の側から見れば、「どの問題が高いバーか」は当日には分かりません。だからこそ、目の前の問題を1問ずつ確実に越えていくことが、そのまま一番の対策になります。
正解数が同じでも得点がずれるのはなぜ?
センターのQ&Aでは、IRTスコアは1題1点ではなく、正解できた問題の統計的性質に応じて決まるため、正解できた題数が同じでも、正解した問題が同じでなければスコアが異なる場合があるとされています。逆に、正解数や正解した問題が違っても、同じスコアになる場合もあります。
考え方をつかむために、当サイトが作った概念上の例を示します。実際のBESTの計算方法や問題の性質を再現したものではありません。
| 受験者 | 正解した問題(例) | 正解数 | スコアの考え方(概念) |
|---|---|---|---|
| Xさん | 多くの受験者が正解する問題を中心に正解 | 40 | 正解数は同じでも、推定される能力は2人で違う値になることがある |
| Yさん | 正解する人が少ない問題にも正解し、易しい問題をいくつか落とした | 40 | どちらが高くなるかは、各問題の統計的性質によって決まる |
| Zさん | Xさんより2問少ないが、正解した問題の組み合わせが違う | 38 | 組み合わせによってはXさんと同じスコアになることもある |
つまり、受験者が「何問正解したから何点」と自分で計算することはできません。自己採点で正解数を数えても、IRTスコアの目安にはならないと考えてください。試験が終わったら結果を気にしすぎず、面接や論文など次の試験の準備に気持ちを切り替えるほうが得策です。
受験者の対策にはどう影響する?
IRTの仕組みを知っても、やるべきことはほとんど変わりません。1問でも多く正解すれば、能力が高いと推定されやすくなることは同じです。注意したいのは、仕組みを誤解して時間の使い方を間違えることです。
| よくある誤解 | 実際の考え方 | 対策 |
|---|---|---|
| 難しい問題に正解すれば大きく得点が上がるから、難問に粘るべき | スコアは問題の統計的性質で決まるが、粘った時間で他の問題を落とせば逆効果 | 時間配分を守り、1問に時間をかけすぎない |
| 易しい問題を落としても、難問が解ければ取り返せる | 易しい問題の取りこぼしが評価にどう影響するかは受験者には分からない | 基礎的な問題を確実に取る |
| 正解数から合否が分かる | IRTスコアは正解数から換算できない。合否の基準も自治体が決める | 自己採点に頼らず、次の試験の準備を進める |
| 受験日によって有利・不利がある | 同じ年度内なら、異なる日・問題の受験者どうしでも比べられるよう作られている | 日程は受けやすさで選べばよい |
具体的な時間の使い方は60問60分の時間配分、目標の立て方は何割で合格かの記事にまとめています。
実力を正しくスコアに出すには?
- 時間を計って解く練習をする:時間切れで後半を当て推量にすると、本来取れる問題を落とします。
- 基礎的な問題を落とさない:地方自治の制度、敬語、構成比の計算など、知っていれば解ける問題を確実にします。
- 迷った問題は仮の答えで埋めて先へ:BEST-Aで誤答を減点するという公式の説明は見当たりません。空欄は残さないようにします。選択肢の絞り方は4択の消去法と見直しのコツで説明しています。
- 同じ手順を別の問題で確かめる:同じ問題の答えを覚えても、本番の別の問題では役に立ちません。
まずは登録不要の無料お試し10問で、4分野のうちどこで時間を使っているかを確かめてみてください。方式による違いが気になる人はマークシートとテストセンターの違いも参考になります。
Q & A
よくある質問
Q.IRTスコアの満点は何点ですか?+
センターは平均的な能力が50で表示されることを説明していますが、満点や上限・下限の数値は公表していません。
Q.自分のIRTスコアを知ることはできますか?+
採点結果は自治体に渡されます。受験者への開示の有無や方法は自治体によって違うので、受験案内や人事担当課で確認してください。
Q.SPIの得点もIRTですか?+
この記事はBESTについてセンターが公表している内容をまとめたものです。他の試験の採点方法は、それぞれの提供元の説明で確認してください。
Q.少人数の試験でも正しく評価されますか?+
センターは、IRTスコアにより少人数の試験でも各受験者の全国レベルでの位置づけが分かると説明しています。受験者が少ない区分でも、全国の受験者と同じ物差しで評価される仕組みです。
Q.BEST-PもIRTスコアで出ますか?+
BEST-Pは正解のない性格検査で、結果は性格傾向の特徴などを示す個人別プロフィールで示されます。IRTスコアで表示されるのはBEST-Aです。