KEY TAKEAWAYS
この記事でわかること
- 衆議院で不信任案が可決(または信任案が否決)されると、内閣は10日以内に衆議院を解散するか、総辞職しなければなりません(69条)。
- 解散には、不信任可決を受けた「69条解散」と、天皇の国事行為(7条3号)を根拠に内閣の判断で行う「7条解散」があります。戦後の解散の多くは7条解散です。
- 内閣が総辞職するのは、①不信任後に解散しないとき、②首相が欠けたとき、③総選挙後に初めて国会が召集されたとき、の3場面です。
- 不信任決議ができるのは衆議院だけ。参議院の問責決議に法的な拘束力はありません。
この記事の目次
議院内閣制と内閣不信任の位置づけ
議院内閣制とは、内閣が国会(特に衆議院)の信任にもとづいて成立し、国会に対して責任を負うしくみです。日本国憲法では次の点に表れています。
- 内閣総理大臣は国会議員の中から国会の議決で指名される(67条)
- 国務大臣の過半数は国会議員でなければならない(68条)
- 内閣は行政権の行使について国会に対し連帯して責任を負う(66条3項)
- 衆議院は内閣不信任決議ができ、内閣は衆議院を解散できる(69条・7条)
アメリカの大統領制では、大統領は議会と別に国民から選ばれ、議会に大統領の不信任決議権はなく、大統領にも議会の解散権がありません。議院内閣制との違いは比較の記述でよく使われます。
不信任が可決されたら内閣は何を選ぶか(69条)
憲法69条は「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」と定めています。
- 不信任決議ができるのは衆議院だけ。参議院の問責決議には69条の効果がない。
- 「不信任案の可決」だけでなく「信任案の否決」も同じ効果を持つ。
- 内閣は10日以内に、衆議院を解散するか総辞職するかを選ぶ。
- 不信任案の可決に特別な多数は不要で、出席議員の過半数で決まる(56条2項)。
| 項目 | 衆議院を解散する | 総辞職する |
|---|---|---|
| 決める期限 | 不信任可決から10日以内 | 10日以内に解散しなければ総辞職 |
| 総選挙 | 解散の日から40日以内に行う | 行わない |
| 次の首相の指名 | 総選挙後の特別会で指名 | 開かれている国会で指名 |
| 国民の意思 | 選挙で直接問うことができる | 選挙を経ない |
69条解散と7条解散の違い
| 種類 | 根拠 | どんなときか |
|---|---|---|
| 69条解散 | 憲法69条 | 衆議院で内閣不信任案が可決(信任案が否決)されたとき、内閣が対抗して解散する |
| 7条解散 | 憲法7条3号(天皇の国事行為としての衆議院の解散) | 不信任決議がなくても、内閣の助言と承認により解散する |
7条は天皇の国事行為を列挙した条文で、3号に「衆議院を解散すること」があります。天皇は国政に関する権能を持たないため、実際に解散を決めるのは助言と承認をする内閣です。首相が政治判断で時期を選ぶことから「首相の専権事項」と呼ばれることもあります。
不信任案の可決を受けた解散は、戦後4回(1948年・1953年・1980年・1993年)とされ、それ以外の解散は7条にもとづくものです。どちらの解散でも、解散の日から40日以内に総選挙、選挙の日から30日以内に特別会の召集という流れは同じです(54条1項)。
内閣が総辞職する3つの場面
| 場面 | 条文 |
|---|---|
| 不信任案可決(信任案否決)の後、10日以内に衆議院を解散しないとき | 69条 |
| 内閣総理大臣が欠けたとき(死亡など) | 70条 |
| 衆議院議員総選挙の後に初めて国会が召集されたとき | 70条 |
3つ目がポイントです。69条で解散を選んだ場合でも、総選挙後の特別会が召集された時点で内閣は総辞職します。つまり、不信任決議を受けた内閣は、解散しても最終的には一度総辞職することになります(同じ人が再び首相に指名されることはあります)。
総辞職した内閣は、新しい内閣総理大臣が任命されるまで引き続き職務を行います(71条)。なお、首相が自らの判断で辞任し、内閣が総辞職することもあります(任意の総辞職)。
不信任から新内閣までの流れ
- 衆議院で内閣不信任案が可決される。
- 内閣は10日以内に「衆議院の解散」か「総辞職」を選ぶ。
- 解散を選んだ場合:解散の日から40日以内に衆議院議員総選挙(同時に最高裁裁判官の国民審査)。
- 選挙の日から30日以内に特別会を召集。ここで内閣は総辞職する(70条)。
- 特別会で、他のすべての案件に先立って内閣総理大臣を指名する(67条)。
- 天皇が内閣総理大臣を任命し、首相が国務大臣を任命して新内閣が成立する。
総辞職を選んだ場合は、総選挙を経ずに国会で新しい首相を指名します。特別会や緊急集会のルールは国会の種類で、総選挙と同時に行う国民審査は国民審査のしくみで確認できます。
内閣と内閣総理大臣の権限
不信任や解散の記述では、内閣の権限と首相個人の権限を入れ替えた誤りも考えられます。主な権限を分けて確認します。
| 権限 | 主体 | 根拠 |
|---|---|---|
| 法律の誠実な執行、外交関係の処理、条約の締結 | 内閣 | 73条 |
| 予算の作成と国会への提出 | 内閣 | 73条・86条 |
| 政令の制定、恩赦の決定 | 内閣 | 73条 |
| 天皇の国事行為への助言と承認(衆議院の解散を含む) | 内閣 | 3条・7条 |
| 国務大臣の任命・罷免 | 内閣総理大臣 | 68条 |
| 行政各部の指揮監督 | 内閣総理大臣 | 72条 |
| 自衛隊の最高の指揮監督 | 内閣総理大臣(内閣を代表して) | 自衛隊法7条 |
内閣の意思決定は閣議で行われます。「国務大臣の罷免には閣議の同意が必要」という記述は誤りで、首相が単独で罷免できます(68条2項)。一方、衆議院の解散は首相個人ではなく、内閣の助言と承認として閣議で決めます。自衛隊の指揮については文民統制で扱っています。
独自の練習問題:不信任・解散・総辞職
当サイトが書き下ろした4択問題です。選択肢は「ア正・イ正/ア正・イ誤/ア誤・イ正/ア誤・イ誤」の順です。
- 問1 次のア・イの正誤の組合せとして正しいものはどれか。ア:参議院で内閣総理大臣に対する問責決議が可決された場合、内閣は10日以内に衆議院を解散するか総辞職しなければならない。イ:衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は総辞職しなければならない。(1)ア正・イ正(2)ア正・イ誤(3)ア誤・イ正(4)ア誤・イ誤
- 問2 次のア・イの正誤の組合せとして正しいものはどれか。ア:衆議院で内閣の信任の決議案が否決された場合も、不信任の決議案が可決された場合と同じく、内閣は10日以内に衆議院を解散しない限り総辞職しなければならない。イ:衆議院の解散は、内閣不信任決議が可決された場合に限って行うことができる。(1)ア正・イ正(2)ア正・イ誤(3)ア誤・イ正(4)ア誤・イ誤
| 問 | 正解 | 各選択肢が誤りになる理由 |
|---|---|---|
| 問1 | (3)ア誤・イ正 | 69条の効果があるのは衆議院の不信任決議だけなのでアは誤り。イは70条どおり。(1)(2)はアを正、(4)はイを誤とした点で誤り |
| 問2 | (2)ア正・イ誤 | アは69条の文言どおり。7条にもとづく解散もあるので「限って」とするイは誤り。(1)はイを正、(3)(4)はアを誤とした点で誤り |
【時短のコツ】「限って」「だけ」「必ず」がついた記述は、例外(7条解散、信任案の否決、任意の総辞職)を1つ思い浮かべられるかで判定します。例外が言えれば、その記述は誤りです。
つまずき別:次に確認すること
| つまずき | 確認する操作 | 進む記事 |
|---|---|---|
| 10日・40日・30日が混ざる | 不信任→10日→解散→40日→総選挙→30日→特別会と矢印で書く | 国会の種類 |
| 衆議院だけの権限があいまい | 不信任・予算先議・議決の優越を一覧にする | 衆議院の優越 |
| 総選挙のしくみを知りたい | 小選挙区と比例代表の違いを確認する | 選挙制度のしくみ |
流れを覚えたら、本番の4択の形で判定できるか試してみましょう。無料お試し10問は登録不要で、4分野の問題と全問の解説を確認できます。
Q & A
よくある質問
Q.参議院を解散することはできますか?+
できません。参議院には解散がなく、議員の任期は6年で、3年ごとに半数が改選されます。
Q.不信任案の可決には何票必要ですか?+
特別な定めはなく、出席議員の過半数で可決されます(56条2項の一般原則)。
Q.衆議院の任期満了で選挙になることはありますか?+
あります。衆議院議員の任期は4年で、任期満了による総選挙も行われますが、戦後は任期満了の前に解散されることがほとんどです。任期満了による総選挙の後に開かれるのは特別会ではなく臨時会です。
Q.参議院の問責決議とは何ですか?+
参議院が首相や大臣の責任を問うために行う決議です。法的な拘束力はなく、可決されても内閣に解散や総辞職の義務は生じません。ただし、政治的な影響は大きく、国会審議が止まるきっかけになることがあります。
Q.内閣総理大臣が病気で職務を行えないときはどうなりますか?+
あらかじめ指定された国務大臣が臨時に首相の職務を行います(内閣法9条)。首相が「欠けた」とき(死亡や資格の喪失など)は、憲法70条により内閣は総辞職します。