KEY TAKEAWAYS
この記事でわかること
- ストックは一時点の残高、フローは一定期間の流入や流出です。
- 期間と範囲がそろう単純な人数例なら、期末=期首+採用−退職で確認できます。
- 数値は学習用の自作データで、BEST-A公式問題や実在の組織の人員記録ではありません。
この記事の目次
100 + 30 − 20 = 110人
採用と退職以外の出入りがない自作例。箱の大きさは人数に比例しません。
幅は月数を表し、人数の大小は表しません。編集部の自作例です。
「100人」と「30人」は、同じ人数でも測っているものが違う
月初に100人在籍し、その月に30人を採用したとします。100人は月初という一時点の人数、30人は月間という期間に起きた採用の人数です。同じ単位だからと、そのまま月末130人と決めることはできません。月中に退職した人がいるか、異動など別の出入りがあるかも確認する必要があります。
ストックは一定時点にある量、フローは一定期間に発生した量です。難しい経済用語として覚えるより、資料の列見出しに「何月何日時点」とあるか、「何月中」「年間」とあるかを探してください。本記事では、表の読み方から一歩進め、時点と期間の違いを人数の表で練習します。
独自例:採用30人でも、在籍の増加は10人
月初在籍100人、月間採用30人、月間退職20人とします。採用と退職は対象範囲がそろい、在籍人数の出入りはこの二種類だけだったと仮定します。月末在籍は100+30−20=110人です。採用30人は流入、退職20人は流出で、在籍の純増は10人となります。
「採用が30人だから在籍人数は30%増」と読むと、退職20人を落としています。この例で月初から月末への在籍人数の増加率は、(110−100)÷100=10%です。採用人数を月初在籍100人で割った30%という比率を計算することはできますが、在籍人数の増加率とは別の指標です。
| 項目 | 時間の基準 | 人数 |
|---|---|---|
| 月初在籍 | 月初時点 | 100人 |
| 採用 | 月間 | +30人 |
| 退職 | 月間 | −20人 |
| 月末在籍 | 月末時点 | 110人 |
| 在籍の純増 | 月初と月末の差 | +10人 |
図では、残高と出入りを違う位置に置く
図の左と右は時点の人数、途中の矢印は期間中の出入りです。矢印が30人だから、右側も30人増えるとは限りません。反対向きの20人を合わせて、二つの時点の差を確かめます。図は関係を示すもので、箱の面積や矢印の太さは人数に比例していません。
同じ関係は、商品の個数を数える在庫表でも使えます。ただし、人員の表と同じ規則があらゆる残高表にそのまま使えるわけではありません。単位、対象、調整項目をそろえたうえで、何が流入・流出に当たるかを考えます。
累計採用者数は、現在の在籍人数ではない
1月に30人、2月に20人を採用したなら、対象と数え方が同じで期間が重ならない限り、2か月の採用人数は50人です。しかし、2月末にその50人全員が在籍しているかは、退職や異動の記録を見ないと分かりません。採用したという出来事と、今いるという状態が異なるためです。
反対に、1月末の在籍110人と2月末の在籍115人を足して、2か月で225人が在籍したとすることもできません。同じ人が両方に含まれる可能性があります。延べ人数を求める指示がある場合は、その集計の定義を確認します。実人数と時点ごとの人数の合計は区別してください。
期間が重なるフローも、そのまま足せない
1〜3月の採用数が60人、3〜5月が50人だったとして、両方を足すと3月を二回数えます。1〜5月の採用数を求めるには、重なっている3月の採用数を一度引く必要があります。3月が10人なら、60+50−10=100人です。
「フローなら足せる」という覚え方だけでは不十分です。期間が連続し、重複がなく、同じ対象と単位で数えた値かを確認します。同じ期間でも、片方は正社員のみ、片方は全従業員なら、足し合わせる前に集計範囲の違いへ戻ります。
| 資料 | 含む月 | 採用人数 |
|---|---|---|
| 表A | 1・2・3月 | 60人 |
| 表B | 3・4・5月 | 50人 |
| 重複 | 3月 | 10人 |
| 求める範囲 | 1〜5月 | 60+50−10=100人 |
月初100人と月末110人から、月平均105人と決めてよいか
月初と月末の単純平均は(100+110)÷2=105人です。しかし、日ごとの在籍人数の平均と必ず一致するわけではありません。追加の10人が月の早い段階から在籍していた場合と、月末近くに加わった場合では、期間中の延べ在籍日数が変わるからです。
設問が「月初と月末の平均を平均人数とする」と定義していれば、その規則で105人を使います。規則も日ごとの記録もなければ、厳密な期間平均を確定したことにはなりません。一人当たりの値を求める際は、売上の期間と人数の測り方が対応しているかを確認します。
金額の残高では、取引以外の調整もある
人数の単純例をそのまま金融資産の残高へ広げるのは避けます。保有資産の価格や為替が変われば、売買をしていなくても円で見た残高が変わることがあるためです。日本銀行の資金循環統計も、取引のフロー、資産・負債残高のストック、両者の差をつなぐ調整を分けています。
残高の増加額と、購入した金額が一致しない資料では、ただちに計算ミスと決めず、評価の変化や範囲の変更などの注記を確認します。本記事は制度や会計処理を詳述するものではなく、残高と出入りの違いを読むために、この点を参照しています。
資料を読むときの確認を四つに絞る
最初に、時点の量か期間の量かを確かめます。次に、期間の重なり、対象範囲、流入・流出以外の調整を見ます。この順で確認すれば、単に足したり引いたりしてよい値かを判断しやすくなります。分からない調整額を、都合のよい数で補わないことも大切です。
増加率の分母や平均の比較と併せて復習し、BEST-A問題集の選び方では、答えの数字だけでなく、なぜその時点・期間を使うかの説明まで確認してください。数値を計算する前に、見出しを短い言葉で言い換える練習が役立ちます。